夢で出逢う炎山と子炎山の話。
時間軸はアクセス、炎山の視点。
僕⇒炎山 ボク⇒子炎山です


「ブルースは元気にしてる?」

隣に座る幼い自分が問いかけてきた。
今、今は、ブルースは。
答えることができなくて口をつぐむ。
自分と同じサファイアブルーの瞳がのぞき込んでくる。
いや、同じじゃない。パートナーを犠牲にした
自分よりずっと透きとおっている瞳だ。
そんなで見つめられたら、隠すわけにはいかないじゃないか。

「ブルースはネビュラと戦ってる時に、
俺の判断ミスで、ダークチップで、それで」

話そうとしたのに、なかなか言葉が出てこない。
頭の中でたくさんの事がフラッシュバックして息苦しい。

「それで、ネビュラの仲間に、なって」

本来いるはずの彼がいない、幾分か軽くなった気がする
空っぽのPETを握り締めてようやく言い切った。
それを聞いた幼い自分は「そっか」と言って
同じように手に握った旧型のPETに目を向けた。

「僕は、昔にしたブルースとの約束を覚えてる?」

「……………ああ」

その約束は、叶わないものとなってしまったけれど。

「ボクはね、約束ってお互いが守ろうとするものだと思うんだ。
一方的に守らせようとするんじゃ、それはただの命令だもん」

そよそよと生ぬるい風が吹き抜けて、
目の前いっぱいの植物が揺れている。
伊集院の本家と母親の墓があるあの地と同じにおい。
ブルースと初めて会ったのもあそこだった。

「両方が忘れない限り約束は消えないよ。
だから、約束を覚えてるなら
今度は僕がブルースのところに行かなくちゃ」

「ブルースは敵になったんだ!!
もうそんなこと言ったってどうしようもない!」

「でも彼が僕らのネットナビだってことに変わりはない。
闇に沈んだならそこからすくい上げるのは
オペレーターにしかできないよ。
それに、暗闇に差しのべられた手の温かさを
誰よりも知ってるのは僕じゃないか」

それを聞いてハッとする。
母さんが死んで、悲しくて悲しくて、
それでも容赦のない現実がまた苦しくて、
誰にも頼れず暗い場所でうずくまっていた自分に
手を差し伸べてくれた赤色の彼に
残っているかもしれない良心は、同じように暗い場所で
主である自分の助けを待っているのだろうか。
涙がボロボロとあふれる。
自分は大馬鹿だ。大切なことすら見失ってしまっていた。

「そう、だな」

ブルースのところに、行かなくちゃ。
たとえぶつかる形になろうとも。

「辛くなったら思い出して。
僕を支えてくれる人が、いーっぱい、いるってこと」

幼い自分は笑顔で言って、すうっと消えていった。
そのあとに振り返るとさっきの植物の蕾が開いて
小さな花が一面を青色に染めていた。






少年と大切な約束のはなし。

やくそくごと

2014/05/12

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