ツイッターの診断メーカーさんから、御沢の奇病パロ。
御幸視点でいつもの当サイトです。


沢村が病気を患った。
馬鹿は風邪をひかないというらしいけど、
実際のところそういうことではないらしい。
それはなんとも奇妙なもので、右目から花が咲く病だった。
もうそろそろ発症から半年になる。
最初の頃は本人も
「なんか瞼にできものできてるんですけど、これなんなんですかね!?」とか
なんかアホらしいことを言っていたけれど、
それはだんだんと笑えるものじゃなくなっていった。
少しずつ、あいつの朝寝坊と居眠りが多くなった。
その次は保健室で眠ることが増えた。
2か月前のある朝に、起きてこない沢村を
起こしに行った倉持が布団をはぎ取ると
沢村の右目に紫色の花が咲いていた。
目を覚ましたのは、その2日後の話。
部員全員が頭を悩ませた。
降谷と小湊も、倉持も、クリス先輩も、もちろん俺も。
病院に連れて行った診察結果は、
原因不明の睡眠障害の病ということだった。


それから沢村は、類に見ない事例の患者ということで
都内の少しはずれにある病院に入院することになった。
時間があるときは見舞いに行く。
それでも沢村はほとんど眠ったままで起きることはない。
窓際にあるベッドの脇の椅子に腰かけて、
規則正しい寝息をたてる彼に最近の出来事を話す。
一昨日は練習が珍しく特別メニューだった、
昨日は試合があって小湊がタイムリーツーベースを打って、
そういえばこの間食堂でゾノと倉持がまーた口ゲンカをしていて。
そんな、半年前まではこいつにとっても
たわいもない日常だったものを淡々と
一方通行で話して聞かせている。
聞こえているのかは、分からないけど。
「沢村、もう少しで夏だぞ」
窓の外の緑を目に移しながら言葉を放った。
また目線を沢村の方へ戻して、頭を撫でる。さらさらの髪の毛だ。
「今年こそは、甲子園、行きたいよなあ」
返事はない。
「もう、お前と組めるのも夏で最後だよ。
懐かしいよな、もう1年経っちまったんだ」
自分で口にしてつらくなった、夏で最後なんかじゃない。
高校でこれから沢村と組める可能性なんか
もうほぼゼロに等しいのだ。
でも、それでも、こいつと一緒に何よりもどこよりも
真っ青で綺麗なあの場所へ行きたくて仕方がない。
「なあ、あのさ。俺、お前に言ってねえことたくさんあるんだよ」
静かな寝息と落ちる言葉だけが、時間の中に生きている気がした。
彼の右目には紫色の花が相変わらず綺麗に咲いたまま。
今ほど花が恨めしいと思ったことはないだろう。
ベッドに横たわって目に花を咲かせた沢村は、
まるでどこかの眠り姫のようだった。
「好きだよ、沢村。だから、早く目ぇ覚ませよ」
またひとつ、言の葉がゆらゆら揺れながら、落下していった。

ストロボと青

2014/08/14

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