#04 Resolution(11/15)
柔らかな栗色の髪が揺れている。
二重で茶色がかかった大きな瞳。
人懐っこそうに目を細め子供のようにあどけなく笑う。
――さくらちゃん……
ゆっくりと目を開けた。
その目には涙が無くなり決意が宿っていた。
彩芽はさくらにとって何よりも大切な存在であった……
父親が居なくなり友達も何もかも信じることが出来なかったさくらを救ってくれた……
一条家に来て間もない頃。
――さくらちゃん!私のお姉ちゃんになって!
理解出来なかった。
『……なれないよ。だってお父さんとお母さんが違うし』
――彩芽のお姉ちゃんになれないの?
ウザイ。
構わないで。
『うん』
――彩芽よく分かんない!パパとママが違うからダメなんて誰が決めたの?さくらちゃんは彩芽のお姉ちゃんだ!って思えば良いだけだよ。他の人達が色々言っても関係ない。怒られるような事なの?
ふっ、と思わず笑みが溢れた。
こいつは馬鹿なのか。
だけど、
胸が熱くなる……
『――事実や数字に基づいた客観的・論理的考え方ではなく、精神と物質の関係に対する主観に依存する物事の考え方。精神論か……』
――うぅ?分かんない!どういう意味?
『ようするに自分勝手でワガママだって事』
――うー!ワガママでも良いよ!さくらちゃんは彩芽のお姉ちゃんだから!
『……どうして?お姉ちゃんにしたいの?』
――だって、さくらちゃん淋しそうだもん。
どこかに消えちゃいそうなんだもん。
彩芽は嫌だよ。一緒にいたい。此処に居てほしい。
涙のしずくが落ちた。
『っ……ありがとう』
幸福感が全身を包み笑みが浮かんだ。
心からの……
――あー!さくらちゃんが笑った!
彩芽が笑いながら抱きついてきた。
私は普通にしているつもりだった。
勉強が純粋に好きだったし、
両親の仕事上興味深い本が沢山ある環境だった。
普通にしていたのに……
周りはそうは思ってはくれなかった。
大人達は神童と呼び騒ぎ立てられた。
友達はさくらの聡明さを怖れ離れていった。
苦しくて辛い時に支えてくれていた父親も居なくなり絶望した。
それを救ってくれたのは彩芽だった。
血の繋がりも赤の他人を受け入れてくれた。
彩芽は私の家族だ。
だから早く見付けなきゃならない。
こんな情けない姿を見せるわけにはいかない!
決意が固まりシャワールームを出た。
その足取りはしっかりと地についている。
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