#05 The game of politics(12/15)


今日一杯目のコーヒーは苦かった……。

カップから渦巻いて立ち昇る白い湯気。
深みのある独特の芳香が漂っている。

ヒューズはコーヒーを飲みながらテーブルに目を向けた。
何年ぶりだろうか……
こうして料理を作る事が。


コーヒーの苦みで頭が冴え、サクラの事を考えた。
血の気のない蒼白な顔色をしていたが、
それを指し引いても彼女は中性的で繊細な美貌の持ち主だ。
且つ、かなり頭の切れる少女だ。
混乱状態にありながら周りを観察し、俺の事を探ろうとした。

他人を寄せ付けないオーラをまとっている。
目は猜疑心に満ちた目。
しかし、子供のように泣き、無邪気に笑う。
不思議な少女だ。

――非科学的な考えだが…恐らく少女は……

背後に視線を感じ振り向いた。

白の丸襟で淡いブルーのワンピースを着、やや乱れ無造作に扱われている漆黒の長い髪のサクラが立っていた。
先程まで青白い肌だったが、人間らしい艶が出て頬にも赤みが指していた。

「うん。よく似合っているな」
「あ、ありがとうございました。あの、これは……」
スカートの裾をつまみ視線を送った。
「それは妻のだ。……安心しな。そういう危ねえ趣味はねえから」
アハハ、と晴れやかな笑い声を上げた。

「あーいえ、そういう意味では…奥様の……」
横目でこっそりと周りを確認するサクラ。
「妻は今故郷に戻っている。彼女の父親が体調を崩してな」
眼鏡を拭きながら答えた。

「そうでしたか……何も聞かないのですか?私の事…」
目には強い意志が見え、まっすぐにヒューズを捉えていた。
「あぁ、聞きたいことは山ほどあるが…と、その前に。腹、減っているだろう?」

――くぅー
と情けない音がした。
サクラは顔を真っ赤にして俯いた。
彼女が返事をする前にお腹が答えたのだ。

ヒューズは大きな体を揺さぶり声が漏れないようにしたが、
ククッ、と喉の奥から声が押し出されている。

「…あの!昨日から何も食べていないので……仕方がないじゃないですか!」
「――ククッ。あぁ、悪い悪い。いや、何ていうか。うん」
「何ですか?」
ジロリ、と睨む。
「まぁ、取りあえず座れよ。こんな物しかないがな」
不機嫌になり口を尖らせたサクラをテーブルに促す。







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