#02 Warmth(7/15)


「君の名前教えてくれないか?いつまでもお嬢ちゃんや君って呼ばれるのは嫌だろ?」
「あっ、はい。ホンゴウ、……サクラ・ホンゴウ……です」
歯切れの悪い言い方にヒューズは眉間に皺を寄せた。
「すいません。あの、私の……国では名字、名前……なんです。何か、口が言い慣れてなくて……」
サクラです、と一礼しヒューズを見た。
お互い視線をそらすことなくまっすぐに見つめる。
「サクラか……。良い名前だな」
よろしくな、とヒューズは手を差し出した。

"あの時"の黒い手と重なり一瞬たじろいだが、
ヒューズの醸し出す雰囲気に安心し顔に笑みが浮かぶ。
「よろしく、です」
ヒューズの手を握り返した。

突然サクラの瞼からポロリと涙が落ちた。
思いがけない事に慌てるヒューズ。
「あっ……?何でだろう?勝手に……ごめんなさい!あの違いますから……」
支離滅裂になりながらも涙を止めようとするが……
溜めていたものが込み上げてきて涙のダムが決壊した。

ヒューズは理解した。
極度の緊張から解放されたのだろう。
それはサクラがヒューズを"信用"したという事を意味する。

口元を緩めサクラの頭を優しく撫でる。
まるで父親が子供に接するように優しく……
「そっか、よく頑張ったな。偉いな。もう大丈夫だ。な?」
心に染み入るような優しい笑顔……
その笑顔につい見惚れてしまっていた。
「こ、子供扱いしないで下さい!」
止めどなく溢れていた涙がいつの間にか止まっていたが、
サクラ自身でも分かるぐらい顔が熱くなっていた。
「おーそりゃ悪かったな」
ヒューズは満足そうに顔を綻ばせながらサクラの乱れた髪を直す。



――トクン
また、胸が鳴った……







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