ハシバミ色の瞳が美しい少女だと思った。












「初めまして。クレメンティア・フォン・エッペンシュタインと申します。英語は勉強中ですが、どうぞよろしくお願いします」












目の前のご令嬢はドレスの裾をあげ、可愛らしくお辞儀して見せた。

英語は勉強中と遜ってはいるが、彼女の英語は(ネイティブ程ではないが)澱みなく完璧だった。
まるで語学留学の必要性を感じさせない。










『こちらこそ宜しくお願いします、エッペンシュタイン公爵令嬢』







いつも傍若無人なチャールズ・グレイが珍しく恭しい態度で年下の彼女に接しているのをみると、この令嬢がかなり高貴な人物であることが伺える。






彼女はそのハシバミ色のキラキラとした瞳でグレイを見据えるとくすりと頬を緩めた。










「嫌ですわ、グレイ伯爵。気軽にクレメンティアと呼んでください」


『いえ、そう言うわけには参りません』







エッペンシュタイン嬢の申し出を頑なに固辞するグレイはどこか彼女と距離をおこうとしているようにも見えた。










『では、公爵令嬢。ボクの近侍(ヴァレット)の名前が、ボクに代わって拙宅をご案内いたします。屋敷のことは彼女にお尋ねください。歳も近いし、同性である名前の方が何かと都合がいいこともあるでしょうし』









尤もらしい理由を付けて、グレイは笑顔で公爵令嬢に名前を紹介した。

要は面倒ごとを押し付けられたのだと名前は理解したが、そんな心中も知らずこのドイツのご令嬢は温かい笑顔で彼女を見据えた。







「まぁ、よろしくお願いいたしますわ」



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