マイケルは心地よい温もりと共に目を覚ました。
干し草から清潔な枕に。
土埃の匂いは薔薇の香りに。
冬の寒風は暖炉の仄かな光に。
爽やかな朝の空気が彼の頬を優しく撫でる。
数日前、一夜にしてマイケルの環境は大きく変化した。
ベッドから降りると、彼の運命を変えた女が部屋の隅のソファの上で、規則的に肩を揺らしながら横たえていた。
”おいで。私の部屋で寝るといいわ。馬小屋なんかよりずっとマシでしょ”
名前と名乗る女は、そう言って暗闇の中から連れ出してくれた。
「………」
両親を亡くし、孤独だったマイケルにとって、誰かに優しさを向けられたのは初めてだった。
(……相変わらず、自分のベッドで寝ないんだから)
その優しさに応えなければと思った。
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