『はぁぁ?!預かってどうするつもり?』





彼は瞳を大きく見開き、何かおかしなものでも見るような目でこちらをみて叫んだ。






「マイケルを使える使用人にしてみせます」








毅然とした態度で答えるが、ハウスメイドも主人に追従するように口を挟んだ。






「無理ですよ!とても反抗的な子で、従僕でさえ手を焼いてるんですから!」


『第一、近侍(ヴァレット)の仕事はどうすんの?舞踏会のダンスの練習もあるし……。君にこの子の躾なんかする暇あんの?』



「もちろん、どちらの職務も支障のないようにします。だから、お願いです」









思えば、こんな風になにかを嘆願したのはここにきて初めてかもしれない。




グレイの目を見つめ、懇願すると彼は観念したように大きく息を吐き出した。










『あぁ〜ッもう!わかったよ。好きにすれば?』










ぷりぷりと腹を立てて、背を向けるグレイに名前は小さく微笑んだ。









「ありがとうございます」



『ホントーに君は……。いつも突拍子もないことをするんだから』










***












「このベッドを使うといいわ」











物置部屋に閉じ込められてたマイケルを連れ出し、暖炉の炊かれた暖かい自室へ案内する。


これまで彼は馬小屋で寝かされたと聞き、それはマズイと自分の部屋で寝かせることにした。










「なんでアンタが自分のベッドで寝ないんだよ……?」









数少ない荷物を両手で抱きしめ、警戒の色を浮かべた表情で部屋を見回したあとで、彼は言った。






「目上の人に対する言葉遣いじゃないわね。アンタじゃなくて、私には名前って名前があるのよ」








立派な使用人にしてみせるとは言ったものの……成る程これは骨が折れそうだ。







「マイケル、貴方にはまず話し方から改めてもらわなくちゃね」








シーツを広げ、再度そこを使うように促すと彼は怪訝な顔でこちらを見据えた。








「……なんで今日会ったばっかの俺にそこまですんの?放っとけばいいんだよ、俺なんか」











不貞腐れたように言い放つ少年の姿に名前は胸を締め付けられた。




10にも満たない子どもが、甘えられる両親を持たず、世間から見捨てられ、一人夜を過ごすのはどれほど孤独だったのだろう。




メイドはマイケルのことを反抗的な態度と評したが……彼はきっと構って欲しかった。

だから、そのような態度をとってきたのだろう。















「子どもが遠慮なんかするもんじゃないわ。馬小屋で寝るよりは私のベッドを使った方がいいと思っただけよ。……それに」














幽霊(その正体はマイケルだったが)の泣き声に怯え、暗闇の中 声を震わすグレイの姿が脳裏をよぎった。




名前の口元はうっすらと弧を描く。













「あなたのおかげで、面白いものが見れたから」














「放っておけなかったの」
続く??



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