「じゃあ、坊やは今回のゲームを見事クリアしたということね?」










ヴィクトリア女王はグレイとフィップスの報告に微笑を浮かべた。








「えぇ。ファントムハイヴ卿の悪の貴族としての素質は申し分ないでしょう。
現に彼は、グレイの罠に引っ掛かることなく事件を処理しております」









フィップスがそう答えると横にいたグレイは面白くなさそうに口を尖らせる。








『折角、ボクが牢屋送りにしてやろうと思ったのにネー』



「バカを言うな。

あそこでファントムハイヴ伯爵が俊敏に対応してくれなければ、
お前だってジーメンス殺しの罪は免れても、執事殺しの疑いを掛けられていた可能性はないとは言えない」






『まァね。実際、あのトリックは穴だらけだったし』









それに、何故 執事が死体で発見された時は灰かきが前に刺さっていたのかも明確には分かっていない。













『ま、でもそこでボクが犯人だって真実を言っちゃったらルール違反でしょ?』








今回の目的は、女王の番犬としての素質の再確認と前回の失敗のお仕置き。










陛下の執事が犯人だと露顕することは、女王の番犬としての資格がない上に陛下の名誉を傷付けることに値する。




楽観的なグレイの考えにフィップスがため息をこぼした。








「そういう問題ではない」








いかにもこれからフィップスの説教が始まりかけた時、女王陛下が静かに言い放った。








「ウッドリーという男を犯人に仕立て上げ、自らの潔白を証明し、思うままに事件を解決……
今回のゲームは貴方の負けね、グレイ?」


『……』








物腰は優しくとも どこか刺々しい陛下の言葉に、普段は奔放なグレイでさえ押し黙ってしまう。











張り詰めた沈黙が流れる中





気高い女王は優雅に紅茶をすすった。






「もしかしたら、坊やは今後 ヴィンセント以上の働きをしてくれるかもしれないわねぇ?」








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