元凶へご報告。






「というわけなんですけど、どうしてくれるんですか!」

『んなこと俺が知るわけねえだろ。』



元凶は阿含さんだろ!、という絶叫を心で押しつぶす。
陸に告げられた事をまんま電話にてお伝えしますとこの態度、どうだろう。

まぁ、そもそも阿含さんに電話して解決するなんて思ってたこと自体が間違いであるような気もする。
今だってあっちの背景音は騒がしい音が聞こえる、きっとクラブかどこかにいるのだろう。
こんなに遊び歩いていても彼はアメフトで負けなしだなんて、天才というのは凄いなとどうでもいいことを思い浮かべていた。

そして天才、で思い出したもうひとりの姿に深いため息を吐いた。



「あー…試合行くの憂鬱です。」

『お前の計画性の無さが仇になったな。』

「他人事みたいに言って、誰のせいですか?だれの。」

『聞こえねえ。』



阿含さん、その返事は聞こえてるやつですよ。そう指摘したかったが威圧的な「聞こえない」は私にとっては体をゾクリと震わせた。
もう主従関係がすっかり出来上がってしまった証拠としか言い様がない。

そう諦めて電話を終了させようとした時、『…ま、』と阿含さんが何か言いかけた。



『その方が都合いいけどな。』

「…はい?」

『なんでもねえよ。』



何か呟いた阿含さんにもう一度聞き直そうと思ったが向こうから「あごーん!」と甲高い声が聞こえてきた。
きっとまた前みたいにナンパして捕まえた女性(ひと)のものだろう。その呼び声に「今行くよ。」と不気味なほど爽やかな声で返事をした。



『じゃ、俺今から忙しいから、カスの相手してらんねえわ。』



そう言ってぶちっと電話を切られてしまった。









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