01.眠り続けるお姫様


静かな環境に慣れないというのはかなり不便なこと。
本来ない雑音が聞こえないのは、本来なら好ましいはず。
ここに一切好ましくない顔をした男が一人。
ククールと呼ぶか、愚弟と呼ぶか、赤い生物と呼ぶかは人によりますが。
今まで布団だったはずの場所にお姫様が眠りそうなベッドがあり、
そこで死んだような魚の目をするククール。
布団はよくないと言い、バザーでベッドを買い二階に放り込んだエイトはかなり満足気。
死体のように眠るユウコ。
連続3日目に突入してしまった。

なぜの異空間から脱出する際に大量の魔力を放出した影響はかなりデカイ。
異変に気づいたエイトが助け出せたのは瀕死のマルチェロだけで、
他三人は自力脱出をすることになった。
閉ざされた退路を作り出せたユウコの技もすごいものだが、魔力の量も計り知れない。

エイトは場を和ませようと必死でベッドを買ったり、
冗談を言ったりしてみるのだが、全く効果はなかった。

「寝相が悪いのは元気な証拠らしいよ」

「じゃあユウコは元気じゃねぇ」

「・・・・・・」

冗談にならない発言をしてしまい固まるエイト。
本人は最高の冗談のつもりらしい。
ブラックジョークの方がお似合いだよ!!と思う。

ユウコがいつ目覚めるかわからないので、交代制で付き添うことになっている。
本来絶対安静にしなければならないマルチェロだったが、
付き添いはやると頑固に言い張るのでみんなで折れた。
安静にぐらいしてた方が家が安心だからとは誰一人言わない。言えない。
夜の付き添いは基本マルチェロの担当で、分厚い本片手に月明かりに照らされている。
その光景に
「ユウコちゃんが目覚めたらマルチェロさんに惚れるレベル」
とエイトが無駄口を叩き叱られていた。

「マルチェロさん、さっきから険しい顔しながら本読むんですね〜
二階は女の子の部屋だからてっきりいろいろするのかと」

「貴様こそさっさと寝ろ」

「酷いな。僕はマルチェロさんが心配なだけですよ。
安心してください、ククールは寝てますから」

マルチェロは本から視線をはずし、エイトを強く睨む。
本が被害に遭わないだけマシだろうか。指がめり込むとかめり込むとか

「・・・・・・何を隠している?」

「なーんだ!!」

「見当はついている。
あいにく私はそちらには興味がないのでな」

「ソッチ!?僕も興味ないな」

「は?」

全く噛み合わない二人に見えたが、
噛み合わないのではなく、これこそ冗談が通じあったらしい。

「彼女の正体には大方見当はついている。
問題は彼女が何者かよりなぜここにいるのか、だ」

エイトは眠るユウコを眺めた。
これから先どれだけの修羅場を潜り抜けるかわからない。
その中で彼女の役割がどれだけの意味を成すか。予想がついているのは彼女だけだろう。
自分たちがこの世界に来て果たす役割が何者であろうと、彼らは果たす気でいた。
それが必ずしも自分を生かすことにならなかったとしても。
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