オープニング(シリアス)
神眼のおかげか、魔物に出会す機会が少ない。
洞窟の中、焼けた家の中、林の中。
逃げられる場所には逃げる。
アテナの魔力で場所がバレる危険性は日がたつに連れて増す。
転々として逃げる日。チーズも残りわずか。
そこでククールはマイエラ修道院に来ていた。
オディロ院長がいた日を思い返しながら二階に上がる。
ドルマゲスと初めて出会した場所だ。
しかし、今はマルチェロが使用した痕として魔法陣が書かれている。二度と使うことのない陣だろう。
「アテナ、聖書持ってきてくれるか?」
「……?うん。」
これでしばらくは聖書探しに勤しむだろう。二人はアテナに聖書を見せたことはない。
宗教には染めないつもりだったらしい。
かつての魔法陣は円しか残っていない。書き出すには十分すぎる。
自分の古い記憶から書き出す魔法陣は、この修道院が破壊されれば痕跡は残らないだろう。
「ククールおじちゃん、これ?」
「残念、違う。それはオディロ院長のネタノート。
まあいいや。アテナ、この円の中心に立ってくれるか?」
アテナが上機嫌に魔法陣の中心に立つ。
愛しいと感じるのは短い期間とはいえ、一緒に逃げてきたからだ。
愛しい子どもにラリホーをかけた。
愛されて、優しい子に育てばそれでいい。
「アテナ、オレじゃあ守れないから。
でも忘れるな。お前は愛されているんだ。オレも兄貴も皆から」
魔法陣に手をのせる。
対価なら何がいいだろう。
そう考えてる場合じゃないのだろう。払うなら大胆に払う。
払うのはオレの存在まるごとで構わない。
持っていけばいいんだ、神よ。
すべてをかけてやろう。
エイトも兄貴もそうするだろうから。
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