01.眠り続けるお姫様


「やーい、化け物!!
泣いたって誰も助けやしないからな」

男子数名が女子一人を取り囲む。
下らない光景だが、学校ではよくあることだ。
しかも、最近の教員は見て見ぬフリをする。保護者がうるさいのだ。
「なんでうちの子を叱ったんですか」と。
悪いことを悪いと思えないなんて可哀想でしかない。
目の前にいるのは子供に優しい国の被害者だ。
リーダー格の男子が女子を蹴り飛ばした。
蹴られた側は平然とした顔をして受け止める。

「そんな顔も今のうちだぞ!!これでもくらえ」

男子が持ち出したのは、綺麗に削られた鉛筆だった。
さすがに刺されば大事故になる。
女子は振り下ろされる鉛筆を睨み付けた。
鉛筆が突然燃え上がり、男子たちは悲鳴をあげた。
灰になる鉛筆を女子はかき集めながら謝った。

「ごめんね、鉛筆は悪くないのに」

「やっぱり化け物だ。
両親も化け物なんだろ?
人に化けて育ててくれてる両親を食う気なんだ!!」

吐き捨てた三流の台詞に飽き飽きした女子は、灰になった鉛筆を悲しげに見つめていた。

〜〜〜〜

眠り続けて6日目の朝。
ククールはユウコの寝てる横で珈琲を飲んでいた。暢気なやつめ。
そう感じなくはないが、最近のククールはナンパに精が出ず、落ちこぼれぎみだ。
意識がそこにあらずで、ベホマラーをかけ忘れたり、スクルトを忘れたりと危なっかしい。
おかげでクロノスが賢者になることになった。
零の洗礼を使ったり、さとりを使うなどして回復から攻撃まで努めるクロノスが優秀すぎる。
意識が抜けきってるククールは珈琲を一口飲むが、すぐにやめてしまった。
紅茶にするんだったと我が儘をぼやく。

「私は珈琲派よ。」

か細い声にククールはびっくりして振り向いた。
珈琲を落としそうになる。
ベッドに溢したら、茶色から赤に染められてしまう。
目を覚ましたユウコは、収縮した筋肉を動かしながら珈琲を奪い、一気飲みをした。
そして今がいつか尋ねた。

「何?一週間寝てたの!?
よく路上放棄しなかったわね。マルチェロさんならしそう。
てかのベッドはどうしたの」

何げに状況が読み込めているユウコ。
驚いたククールはとにかく叫んだ。
家にいる人みんなにわかるように無駄に叫んだ。
こいつは武道家で雄叫びをするクラスだ。
あんまりの煩さに朝食を作っていたマルチェロが、エプロンのまま熱したフライパン片手に上がり込んできた。
絵面がかなり危ない。

「ユウが・・・・・・ユウコが目を覚ました!!
兄貴、飯だ飯!!」

「・・・・・・騒がしい。お粥ならすぐ作れる。
何もない胃に固形物はよくない。」

「何?ユウコちゃん起きた!?
じゃあ大根おろしとかいいかな?」

「ユウコが起きた?大根おろし?
そうか、なら鯖を焼こう」

「エイト、クロノス、固形物はダメだって兄貴が言ったろ」

みんながマイペースな中、ユウコだけ約一週間眠り続けていたことを不思議がった。
そこまで寝るようなことをしただろうか。
とにかくまずは食べることに優先しようと、ククールの手を借りながら起き上がることにした。
ククールのやけに嬉しそうな照れ隠しを見ながら、ユウコはやっと久しぶりな気分がした。
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