10.ビッテンフェルトの恋煩い 1/3

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カサンドラはベッドに飛び込んだ。疲れが出ると義手が重みにしかならず、余計な荷物をが増えたように感じてしまう。目上よりも先にベッドに体を預けて寝てしまった。シャワーぐらいは、ビッテンフェルトにくれてやることになった。
ビッテンフェルトは、シャワーのお湯の温度を43度にまであげていた。カサンドラが見たら、「年寄りみたいな温度」と馬鹿にしてくるだろう。本人は寝ているので、実際は分からないが。
約一年が過ぎ、口の悪いカサンドラの心情を理解できるようになった。発言と想いが必ずしもイコールになるとは限らない彼女の、不器用だが優しい面には利点を感じる。口の悪いが命に関わるようなことだけは止めていただきたい。それは彼自身にも言える話だ。被保護者に似たともいう。

「たく、ただの小娘だろうが。」

ただの小娘に執着する自分が嫌なのか、執着していること自体が嫌なのか。どちらにしても、不快感であることには変わりがなかった。
タオル一枚を腰に巻いて、シャワールームから出る。ビールでも飲もうかと思ったが、ベッドに目が向いた。
丸くなって寝ているカサンドラだが、魘されている。寝相は悪いが夢見まで悪いなど聞かされていないビッテンフェルトは、考えるより先に起こした。
起きた彼女は、寝惚けた様子を見せる。辺りを見渡して何かを探しているようだ。

「理菜?」
「リナ?お前、魘されていたぞ?」
「ビッテン・・・・・・!?」

寝惚けていたカサンドラは、覚醒してビッテンフェルトを見た。やはり考えるより先に行動を起こした。顔面に蹴りを入れる、という。

「タオル一枚で何してるんですか!!」
「貴様の体に興味なんてあるか!!起こしたことに感謝しろ」
「なっ・・・・・・!?
テメーに興味なんざ持たれて堪るかよ、むさ苦しいだけが取り柄の脳筋野郎に。むさ苦しい女がお似合いだろ?
あー、シャワーでも浴びてきます」

これを言われたビッテンフェルトは、開いた口が閉まらないというような顔をした。彼の横をカサンドラが音もなく通る。いや、音がないのではなく聞こえていなかった。
今までここまで言われたことがない。怒りよりも悲しくなる。しばらく放心状態になったビッテンフェルトは、意識が今に戻るとやっと心情が顔に出た。
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