10.ビッテンフェルトの恋煩い 2/3

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むさ苦しい女という点は間違いだったと思う。シャワーの設定温度に疑問を感じながら、一人で反省する。
ビッテンフェルトみたいなタイプは、明るくて守りたくなるような男性好み典型女性がお似合いだと考える。カサンドラがそれに当てはまるかというと、何歩譲ろうが当てはめられないだろう。
自身の欠点はよく理解している。口が悪い点はただの強がりで、守られるなど弱みとしか見ていない。その上、残念ながら甘いものや可愛いものは嫌いだ。守りたくなる点など見つける方が大変だろう。中学時代に、付き合いたくない女ナンバーワンに名前があがっていたことを思い出す。

「・・・・・・なるほど、直そうとしないから尚更嫌がられるのね。」

一人で納得し、カサンドラは別のことを考えることにした。
魘されていた夢の内容。しっかり覚えている。ブラスターと戦斧を抱え、理菜と向き合う自分がいた。夏目という日本人の友人ではなく、カサンドラという一人の帝国軍人として。自分なら友情を優先するより、役割を優先するのではないか。そんな悩みをあんな夢で見ることになるとは、気持ちが悪い。社会学みたいな考えをするものではないのかもしれないが、社会的役割と地位の違いに過ぎないのだ。そこのギャップに悩むからいけないのだ。ならばなかったことにするのか。それも違うだろう。実際のところ、その事態が起きたら、自分は何をとるのだろうか。カサンドラはタイルでも眺めようと目線を下に下げた。

「ぎゃあー!!」

カサンドラはシャワーを止めずに、タオル一枚で駆け抜ける。
悲鳴を聞いたビッテンフェルトが顔を覗かせると、震えたカサンドラが飛びついてきた。自分では叱っていた彼女が、タオル一枚でやって来たので不快に感じた様子。ビッテンフェルトはしかめっ面を向けた。

「G級クエストだ!!嫌々!!どうにかしてよ。村クエで詰む!!」
「は?たかがゴキブリだろう」
「・・・・・・!?ビッテンフェルト大佐、まだタオル一枚」

カサンドラはビッテンフェルトを突き飛ばし、服を一式持って姿を消えた。ゴキブリと対峙することを余儀なくされた彼は、力に物を言わせて撃退した。
これは彼女にも予想がついたようで、その一晩は近寄らせてはもらえなかったビッテンフェルトだった。
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