7.軍人になる。 1/4

bookmark
【日記のサボりからの復帰/オーディンって人工惑星か?また晴れだ
日記なんてサボって当たり前。でも、いつか娘が読むかもしれんだろ?……それはメモ帳というセーブデータだけど、通りすがりに読むかもしれんだろ?あ、今自分の死亡フラグ立てた。
今日、犬のアルテマが無駄吠えしたので躾をした。犬は猫より上下関係を重視する。無駄吠えしたということは舐められているということ。まあ、そんなこと言わなくても、ビッテンフェルト提督……大佐がアルテマに対抗心燃やしてたんだがな。
大佐と言えば、私は実写映画公開前にトリップしたのか。鎧のクオリティだけでも確認したかったな】

日記を書き始めてから、あまり時は経っていない。
彼女はいつものように軍人の食事のくせにまずいと思いながら、興味の湧かない書類に目を通す。自分の立場ぐらい把握しようと、戸籍上の立ち位置を確認していた。
どうやら、簡単にいえばユリアンに近い立ち位置らしい。近いというのは、養子とかいう枠ではなく複雑な立ち位置のようだ。見たことのない単語ばかりで理解できない。
スプーンを口に加えたまま舌打ちをしていたら、ビッテンフェルトが横に座った。普通なら目の前に座るのではないか。常識はあるが、使用しないような彼に普通という単語は無用だろう。
いつもなら自ら口を開くビッテンフェルトが黙っていることを不審に感じた。

「何も言わないんですか。それとも問題でもありましたか」
「まったくもってその通りだ。
イゼルローンのアルバートの麾下に配属されることになった」
「誰がです?」
「お前が」
「軍属では副官に出来ないからっていつの間に私を正式軍人にしたんですか。
命令だからそのアルバートとやらの麾下に入りますが、どうなさるおつもりで」

カサンドラは知らない名前に嫌な予感をさせた。気づいたら死んでいるなんて真似だけは避けたかったからだ。
ビッテンフェルトは私を麾下に出来なかったことより、何か別の点を気にしているようで、嫌な予感を増幅させていく。

「実はだな、あそこは戦いが下手だ。呆気ない戦闘で死ぬかもしれない」
「そんなもの今の時代なら皆同じでは?」
「俺はだな、お前を無駄に死なせたくはないから心配しているんだ!!」
「自分の心配でもしたらどうです?
明らかにこの配属はあなたに対する嫌がらせですよ。」

噂には聞いていた。ビッテンフェルトの下にいるカサンドラが優秀という噂。その優秀な部下を使い、ビッテンフェルトは軍を私兵としようとしているという噂。
自分を優秀と言われることは有り難いが、その噂で命の危険に晒されることは予想外。しかもビッテンフェルトの良からぬ噂をデマまで流してくるとは。銀河英雄伝説全巻を読んだカサンドラからしてみると、確かに私兵とも言えるが今の段階ではないだろう。
だからといい、貴族の嫌がらせ相手に無駄に死んでやる気はない。いざとなればオーベルシュタインのように、自分を売り込んでまで生き残ってやるつもりでいる。そもそも、ビッテンフェルトのような感情的になるタイプでも、オイゲンのように理性役をするタイプでもない。正直なことを言うと、オーベルシュタインの下に行きたかったのだが、はじめから文句を言えるタイミングがない。こうなれば我が儘を言う気力など無くす。

「俺に対する嫌がらせなどどうにでもなる!!
しかし、お前はどうだ!!男の俺より明らかに弱い立場だぞ」
「現代社会なら炎上だな。
しかし、命令に従わないわけにはいかないでしょう。
ここだけの話、軍法会議にかけられようが生きる道を選びますよ。
即座処刑なら抵抗はしてみます。」

我々しか聞いていないことを確かめながら、一応台詞を考えて言ったつもりである。しかし自分の台詞を反芻して、空気を読めてないことに気づいた。
実際に戦場で空気を読んでいたら死ぬからこれでいい、などと考えて自分の中では笑い話にしてみせた。本当に笑い話になればよいが。
[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -