7.軍人になる。 2/4

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アルバートという貴族出身の将軍が戦いが下手と言われる理由は、カサンドラが配属されてすぐに見抜かれた。
軍人ではなく芸術家にでもなっていたら、恐らく平穏な人生として終えていただろう。キャンバスを宇宙にしたことが間違いだ。しかも、画材に味方の血を使うことが一番の問題だ。
血の気の多い場所からはじめから戦う気のない集団に来たカサンドラは、慣れない空気に溜め息をついた。これがストレスの表れではないことを祈りながら、形式という挨拶をするために歩みを進める。
見るからに弱そうな男が提督と呼ばれるような人とは思えず、カサンドラは一瞬見逃すところだった。覇気のない男に頭を下げるなど癪に障るが、ここは自分の命のためにプライドをしてるとした。
目を合わせたいとは思えずに、首の下に目線を合わせる。少しだけ相手の顔を見た。こんな司令官の下にいたら確かに死ぬ、という確信を得たカサンドラ。今生きている部下は運が良いのだろう。カサンドラは目に見えるほど嫌われる方が良かったと思う。嫌う感情は先が読みやすいからだ。
挨拶を終えたカサンドラは、戦艦内部を見て回った。覇気はないが平和な時代なら居心地が良いと思う。しかしこのまま戦闘になった場合、生き残れるかという問題はやはり別のようだ。
一方でビッテンフェルトは何をしても落ち着きがなかった。
日頃彼女に生活必要な処理を任せていた訳でも、重要書類を任せていた訳でもないのだが、いないことに落ち着かない理由を置いていたようだ。
出来る限りの手段で自分の士官にするために必死になるビッテンフェルト。一番早い手は司令官共に宇宙の塵と成り果て、彼女は無事に戻ってくること。そんなうまい話があるはずがない。だからこそ必死に考える。

「ラインハルト・フォン・ミューゼル。スカートの中の大将か。
認めてはいる。むしろ、あの人の指揮下に俺は入るべきなのだ!!
しかし、私情を持ち込むわけにはいかんからな」

妙なところでアクセルを踏みとどまるビッテンフェルトに、珍しくオイゲンが踏む役目を買った。
ラインハルトに自分が彼を認めている事実、貸しを敢えて作ることの二点に利点を見出だしている。ラインハルトの目にビッテンフェルトが止まっているのか分からないのだから、自分から前に出て主張するしかない。また、貸しを敢えて作ることで、ビッテンフェルトの「ラインハルトの指揮下に入る」願いを叶えられるかもしれない。どちらにしても、縁を作るには良い機会だ。貸しを作る側も利点はちゃんとある。今回は作ることが最善の手かもしれない。
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