6.他者と自分 大事なのは? 3/3

bookmark
一瞬理解に苦しんだカサンドラだったが、我に返り目を見開いた。
白兵戦の訓練ばかりやらせて、事務処理の仕方など教わっていない。そんな女の子を副官にしたいなど変わっている。そう考えた後に、不思議に思った。副官はオイゲンの予定ではないのか。もしも他人のポジションを奪った場合、本来つくはずの人はどうなるのか。
ここまで考えてから、自分の考えが甘かったことに気づいた。軍人で生きるか死ぬか分からない戦場に送られる中で、他人の心配をしていたら自分の身が守れるのか。ここは他人のポジションを奪ってでも、生きることに執着してみせるべきではないか。元の世界に帰れそうにないと思ったなら、すぐにでも思考を切り替えて先に進むべきだ。
よく物語には、その世界に干渉しすぎてはいけないという暗黙のルールがある。しかし、実際にそう言っていられない。

「私に副官が務まるなら、やりますが?
ただ、事務処理とか苦手なんですよね。出来れば簡単な仕事がいいな。
ビッテンフェルト大佐の後始末は嫌かな」
「ははは、気持ちはわかる」
「お前たちが騒がしいから俺が苦労するんだ」

騒がしいのはビッテンフェルトだ。
肩をくすめてカサンドラはさっさと食堂に向かった。それが彼女の笑みだったのだが、二人は気づかなかったようだ。気づくようになるのはまだ時間がかかるらしい。
[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -