愛しい師匠 | ナノ


▼ 13.姉の復讐劇

遠征が決まるまで残るは数日。
雨の中、菊地原は傘ではなくレインコートで街中を歩いていた。
横には歌川がいる。遠征が決まれば、一緒にいる期間も必然的に増えるのだが、あえて一緒にいるように見える。
辺りを見渡して、機嫌が悪そうにする菊地原。
実はこの数日、風間と如月が揉めているのを聞いてしまったのだ。
如月は風間隊が遠征に行くことに反対している。風間隊でない彼女がでしゃばる場面ではない。
しかし、反対されると何故か遠征に躊躇してしまう気持ちになる。菊地原はそれが不愉快だった。

「お前、傘ぐらい持てよ」
「やだ、めんどくさい」

歌川は自分で傘を独占した。誰が菊地原に入れてやるものか。
すると、菊地原は傘を歌川から取ろうとする。レインコートの意味はなんなんだ。
二人は風間に言われた焼き鳥を買い、帰宅しようとする。
焼き鳥の中身は、つくね、レバー、かわ、ねぎま等の定番ものだ。如月がレバー好きだったため、菊地原がやたらとレバーを大量に欲しがったが、食べるのが彼女だけだったので、歌川が止めた。

「ねぇもっとレバー買わないの?
絶対足りないよ。あの人、女のくせに食べるから」
「だから他も買ったんだろう。
宇佐美先輩はつくね希望で、風間さんがねぎま。
あと、サラダを買って帰るからな」
「え、トマトは嫌。」
「そんなこと言ってるとプチトマトだけ食わせるぞ?」

文句を言う菊地原を無視して歩く歌川。
ある程度歩いてから、菊地原がついてきていないことに気づいた。
慌てて引き返す。走って菊地原を見つけた歌川。
珍しく菊地原が路上で髪を結んでいた。しかもレインコートのフードをおろしたまま。

「歌川、遅れる。先に行ってて」
「どうしたんだ?」
「それと、ぼくが何をしようと歌川は関係無いから。
『知りません』って答えればいいんだからね。」
「だからなんだ、菊地原」
「トリガーオン!!カメレオン!!」
「街中だぞ!?」

街中で緊急時以外にトリガーを起動してはいけない。
透明になった菊地原だが、雨のせいかいることはわかる。振り返らずに菊地原は、歌川を置き去りにした。
透明になったということは、周りを巻き込んだり迷惑をかける気はないのだろうが・・・・・・
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