愛しい師匠 | ナノ


▼ 13.姉の復讐劇

雨に降られた。
如月は男と共に喫茶店にいた。彼女にしては好都合だ。
優しそうな青年はブレンドコーヒーを2つ頼む。ひとつは如月のぶんか。
微笑まれたので微笑み返した如月。内心では嫌気がさしていた。微笑みを浮かべる必要がどこにある。菊地原に笑った方が数十倍マシだ、と。
運ばれたブレンドコーヒー。特に不自然な点はない。毒はないだろう。

「で、話ってなんだい?
ボーダーで忙しいだろうに」
「オペレーターなんて忙しくないわ。
画面見て、敵の位置を教えるぐらい。
みんな任務中おしゃべりだから楽しいわ」
「ふーん、妬けるね。
ボーダーでもモテるだろ?男多いって聞くから」

内心では舌打ちをしたが、表には出さない。オペレーターが早く弾丸の軌道を出してくれなければ、リアルタイムで変化弾の軌道を引くのは大変。
やれなくはないが、オペレーターが忙しくないは嘘だ。まず、如月がしていること自体が嘘に等しいが。

「で、話って?」
「変な噂を聞いただけよ。
そんな睨まないでね?」
「噂?」
「あなたが、私の弟を脅迫してたって本当?」

平常心を保とうとする。
なんのために情報欲しさに近づいたか、忘れてしまわないように。
今、感情に任せてしまえば無になるではないか。

「は?君の弟は引きこもりで、確か死んだんだろう?
無理だよ、脅迫なんて」
「質問を変えましょう。
あなたが、学校に行かせないようにしたのかしら?」
「・・・・・・調べたのか?」
「あら、意地悪ね。
あなたも私と本気で恋愛してた訳じゃないでしょ?
それと同じよ。裏切りなんてないわ。」

微笑みを浮かべる。仕方がなく、男は微笑み返した。
腹の探りあいというやつが終わったのだ。
男はブレンドコーヒーに映る自分を見つめる。歪む自分が今の自分を表している。

「復讐か。でも君の敗けだ。
まさか、一人でそんな話を受けると思った?」
「・・・・・・!?」

後頭部に衝撃が走る。痛い
テーブルに倒れた如月は、視界が歪んでいることに気づいた。脳が揺れている。
反撃ができそうになかった。

「あぁそうそう。さっきの答えね。
返事はYES。そうだよ。俺がちょっといじってやっただけさ。」
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