子どもみたいに無邪気な

僕が死ぬか
リリンが死ぬか。

その二択だったはずだった。

「させない」

そう言って間に立ちはだかったのは音羽だった。
何度僕が説得しても彼女は何も言う事を聞いてくれなくて、終いにはゲンドウに殴り込みに行く始末だった。
ゲンドウは何かを悟ったのか、それとも納得したのか。
真実はわからないが、好きにしろ。と一言を残して行方を眩ませた。

「音羽!」
「わ、待ってよー!」

時の流れは早いもので、あれから数年が経った。
ファーストはまた心を育んで今は晴れてシンジくんと付き合っている。

「もう、18歳になったんだから少しは大人らしくできないの音羽?」
「そんなアスカだって変わってないじゃないか」
「なんですってえ!」

シンジくんの一言で怒りを表すセカンド。
おっと。もうこの言い方は止めて欲しいと言われていたのに、語り出したら久々に出てきてしまった。

「まったく、 高校最後夏休みなのに怒らせるんじゃないわよ」

ふん。と少し荒々しい言葉を返すアスカは本当に変わっていない。

「アスカが勝手に怒ったんじゃ…」
「なんですってえ!」
「アスカ」
「うぐ…な、何よレイ」
「あまりシンジくんを責めないで」
「…っふん!仕方ないわね、許してあげるわ!」

数年前では考えられない光景だろう。
名前を呼びあったり、こうして皆といる今。
むしろ誰が想像し得ただろう、こんな光景。
それを実現させた音羽はと言うとクスクスとおかしげに笑っている。

「音羽、楽しい?」
「カヲル。うん、楽しいよ」

あんな事があったなんて嘘みたい。なんて笑う彼女は本当に可愛い。

「アスカ、ほら早く行こう?バスの時間過ぎちゃうよ?」

アスカの手を引っ張る音羽の笑顔を見た全員はきょとんとしてから全員笑みを浮かべた。

「そうね、早く行きましょ!」
「せっかく皆で行けるんだし」
「もったいないわね」
「でも音羽、手は僕の手をつないで欲しいな」

アスカを引っ張る反対側の音羽の手を取ると指を絡めて引っ張る。

「わ、ちょ、カヲルっ」

勢いそのままに手を引っ張ればアスカと繋がれていた音羽の手はあっさりと離された。
同性相手にこんな子どもじみた事を思うのはおかしいかもしれないが、数年経った今だって僕はリリンのそういう気持ちがまだわかっていない子どものようなものだ。
だから別に同性相手にだって嫉妬したっていいだろう?

「音羽の水着姿は可愛いだろうな、早く見たいよ」
「か、カヲルっ」

真っ赤にさせて照れる彼女はとても可愛らしかった。

「なに?」

にっこり笑えば音羽は何も言えないようでぐっと口ごもった。

「やっぱり音羽は可愛い」
「可愛いとか連発しないのっ」

パシッと反対側の手で肩を叩かれる。
それすら愛しいなんて僕はどうかしてるだろうか。
けれどそれぐらい愛しくてたまらないんだ。

「本当の事を言って何が悪いの?」
「くっ、このイケメン…!」

それはどうも。と思わず言葉を出しそうになったがあえて言わなかった。
そうやって言い返して真っ赤になって拗ねる音羽も見てみたいけど、何より今はこうして手を繋いで音羽を独り占めしてる優越感に浸りたいのだ。

なんせこの後はどうせまた着替えを口実にアスカに取られるのだから、今ぐらい構わないだろう?




でも、夜は僕のそばにいて。








2016.10.06.

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