僕と君の非日常3

パイロットだのなんだの

いきなりこんな世界に飛ばされて

生きたいと願ったはずなのに

どうしてまたこんな戦地に赴かなければならないのか。








ー僕と君の非日常3ー







「音羽ちゃん急いで!」
「ミサトさん!私さっきシンクロテスト終えたばかりですよ!?」
「使徒が来たんだから仕方ないよ」
「そんな悠長なこと…!」

シンクロテストが終わってこれからの住まいをどうしようかという話をしようと談話室に向かっていたはずだった。
するといきなり警報が鳴り響き、現在だ。

「怖いかい?」
「当たり前じゃない!」

音羽の叫び声にミサトとカヲルは目を見開いた。

「私、私は…!生きたいと思ったのよ、あの時、死にそうになったあの時!」

誰からも認められない
誰からも見向きもされない。

そんな事で人生を終えたくなかった。



「それがまた死ぬかもしれない戦地に行けなんて、そんなの怖いに決まってるじゃない!」

走る足を思わず止めた。
止めて俯いた。
そして惨めにも思い出すのだ、あの日を。

「…なら死ななければいい」
「は…?」

カヲルの言葉に思わず何を言っているのかと顔を上げた。

「どういう過去があるにしろ君は今ここにいるんだ。その事実は消えないよ」
「だからって今まで争いと無関係だった世界にいたのよ!?体が動くわけないじゃない!」
「その時は死ぬまでだよ」
「…っ!」
「渚くん、やめなさい」
「…失礼しました」
「音羽ちゃんも。確かにいきなりな事をして悪いと思うわ、でも絶対に出なければいけないというわけじゃないの」
「え」
「表には出てもらうわ、ただ今回は近くで他のパイロットの動きを見てちょうだい」
「…わかりました」

何をどう嫌がってもきっと有無を言わさずに参加させるのだろう。きっと。

「なら私は渚カヲルくんの近くに置いてください」








『使徒が接近しています!』
『音羽ちゃん、そこから動かないでね』
「はい、わかってます」

渚カヲルの言葉でカチンときた。
そうね、死なないようにすればいいのよ。
何がなんでも生き残ってやる。
その為にはおそらく3人の中で一番強いであろう渚カヲルの側にいるのが一番だ。
その分危険でもあるだろうけど。

「2号機、ごめんねアスカじゃなくて」

アスカが復帰するまでなんとか乗らずに済む方法はないか考えようと思ったけれど、そうもいかなかった。
するとそれに答えてくれたのか胸の奥が温かくなった。

「ありがとう…」
『音羽ちゃん避けて!』
「え」

バンっ。とすぐ隣で音がしたかと思うと6号機と言われていたエヴァがこちらを見ていた。
そしてそのまま2号機を抱え込むようにして抱きしめその場を飛ぶように抜ける。

「えっちょ、何!?」
『何ぼうっとしてるのさ、本当に死にたいの?』

通信で渚カヲルの声が聞こえてくる。
イケメンだからってなんでも許されると思うなよ。と思わずむっとしてしまった。

「それはどうもすみませんでした!離してもらえます?」

少し間が空くと離してもらった。
いままでヒステリックになったお母さんや怒ってばかりのお父さんを見ていたせいか、どこか冷静な自分がいる。

「ミサトさん、状況の説明をお願いします」
『ええ。今まで1体だと思っていた使徒がもう1体いたの。…内1体、あなたに相手してもうらことになるわ』
「わかりました」
『…大丈夫?』
「ええ。遠目からでも一応渚カヲルの動きは見てました。やってみます」

シンジやレイが来ないという事は、怪我をしていて動けないのと制限的なものなんだろう。
どこの回だったか乗るなと言われていた。

「2号機、力を貸して」

神様だって何も私にすぐ無駄死にさせるためにこの世界に飛ばしたわけでもないだろう。
じゃないと理にかなわない。
なにかしら反射神経や運動神経ぐらいは授けてくれていると思うんだ。

「いきます」











あれ
私どうなったんだっけ。

うっすら目を開けると見慣れない天井。

何が起こったのかと首をゆっくり動かして横を見る。

「目が覚めたかい?」
「渚カヲル…」
「カヲルでいいよ」
「…カヲル」
「君はよく頑張ったよ」
「…え」

コトン。とカットされたりんごの入った器が置かれる。

「最後の最後で油断して使徒の最後の力で腹部を貫かれて気絶するまではね」
「…あ」

そうだ。
あの後本当に反射神経と運動力が備わっていた自分の体。
しかもなんだかんだ頭もキレて使徒を追い込みコアを破壊したのだ。
それに終わった。とホッとしていれば使徒の紙切れみたいな手が鋭い槍みたいなのになってそのままお腹を貫かれた。
それを思い出してぞっとする。

「あんな…直に自分が受けた感覚になるんだ…」

そう言いながら自分のお腹をさする。
もちろん実際お腹に穴が開いたわけじゃない。

「…初めてにしてはよく頑張ったと思うよ」
「…!」

数秒置いてぐるっとシーツにくるまる。
だって嬉しかったんだ。

「音羽?」
「なんでもない」

涙声になってるともろバレだろう。
けれどしょうがないじゃないか。

初めて
初めてなの。

自分を見てもらえたのが。

頑張ったねって言われたのが


本当に嬉しかったの。






2018.01.03.

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