僕と君の非日常2

「そうだ音羽ちゃん。エヴァにのってみない?」
「はい?」


カヲルを見て呆然としていた私に
すごい言葉が飛んできた。















―僕と君の非日常2―














「あのー葛城さん」
「やあねえミサトでいいわよ」
「えと、ミサトさん」
「なあに?」
「私、まだ乗るなんて言ってませんが」
「あら、あなたの身元は私たちネルフが証明するんだもの、ただ住みするのかしら?」
「……」

なんて汚い。と思ったのは言うまでもないだろう。

「そもそも乗れるかなんてわからないのに…」
「あら、だから今から確認するんじゃない」
「……」

着るときはあんなに緩かったのに。
空気を追い出せばきゅっと締まる服。
窮屈だ。

「…ある意味生きている事を実感させられる、な…」

これは夢なんじゃないか。
何度もそう思って
歩いて
いつ覚めるんだろうって。

「音羽ちゃん?」

名前を呼ばれてハッと我に返れば心配そうにこちらを見ているミサトがいた。

「ごめんなさい、なんでもありません」

夢にしては長すぎる。
衝撃な事が起これば夢なんて覚めるもの。
つまり、現実。

「そう?なんだか顔色が悪いわ」
「考え事、してたので」

生きたいとは願った。
確かに願った。

カタカタと震える手。
もしエヴァに乗れるとすれば戦わなければならないという恐怖。
見ているのなんて簡単だ。
見ていて、共感するのは、同情するのは、簡単だ。
もしそれが自分に降りかかったとき。

「っ!」

ぎゅうっと音羽は自分の体を抱きしめる。
ミサトはそんな音羽を見ても何も言わなかった。
そんな人間なんて山ほど見てきたからだ。
それでも何も声をかけない。かけられない。

「着いたわ」

ピタリと足を止める。見上げれば目の前にはエヴァ。
大きい。
なんて大きい。
それだけでガクガクと足が震える。

「これは二号機。今パイロットが精神的に負傷していて乗る人がいないのよ」
「え…?」

ミサトの言葉に音羽は目を見開いた。

「カヲ…さっきの彼が乗っていたんじゃ」
「渚くん?彼はもともと違うエヴァのパイロットよ」
「え、え…?」
「さ、とりあえず乗ってみて、シンクロテストしてみましょ」
「え、ちょっ」

音羽はミサトに引っ張られプラグの中へと入れられる。

「ミサトさんっ」
「まあまあ、細かい話は後にしましょ」

パチンとウィンクをして彼女は扉を閉めた。

「え、えええええ」

想像以上に強引な人だった。
音羽はガックリと肩を落として諦めると大人しく座席に座った。

「えーと…」
『音羽ちゃん、座った?』
「あ、はい」

この後どうなるんだっけ。と思っていればLCLが流れ込んでくる。

「うわあ!?」
『肺に満たされれば呼吸できます。慣れて』
「慣れてとかそんなっ」

全部が満たされ止めていた息も続かない。ゴボッと吐き出せば不思議と息ができるようになる。

「…でも慣れない自信ある…」

だって、どう見てもオレンジ色の水だ。

『音羽ちゃん、そのまま目を閉じて』
「あ、はい」

言われた通りに目を閉じる。
シンクロなんてどうすればいいんだろう。


―あんたなんて生まれなければ―


きゅっ。と思わず操縦機を握ってしまう。
もし私が二号機とシンクロできなかったらどうなるのかな。
二号機のパイロットって確かアスカだったよね。

「次のパイロットが出るまで、君は一人になるの…?」

必死に記憶の中にあるエヴァを思い出す。
シンクロなんてわからない。
ただ一つ、心があるということしか。

「…なら余計に、私なんかに乗ってほしくないだろうに…」

機械だと思っていたエヴァが人造人間であり、人間と同じで心があるということ。
それが衝撃的で覚えていた心があるという事。

「アスカがよかったよね、きっと…ごめんね、私なんかが座って」

カヲルも乗っていたような気がするが、今は違うようだ。
もしかしたらエヴァの中でのパラレルワールドというものかもしれない。

「…ねえ、お話ししようか、二号機…」

あなたの声は聞こえないかもしれないけど。と音羽は操縦機から手を離してポスンともたれるように肩の力を抜いた。
そんな音羽の落ち着いた顔を見てミサトは安著した。

「緊張はほぐれたみたいね」
「シンクロテスト、始めます」
「お願い」



二号機。アスカはあなたにとってどうだった?
友達?
家族?
乗ってもらえないって悲しいね。
独りは嫌だね。

そんな事を考えていればなんだか暖かいものに包まれるような感覚がきた。
気のせいかもしれないけれど、それが二号機な気がした。




「…嘘でしょ…」
「シンクロ、50%を超えました…」

その言葉にザワつく場内。

「受け入れてるっていうの、エヴァを?」

さっきまで恐怖で震えていた音羽を思い出しては信じられないとミサトは目を見開いた。

「へえ、凄いですね彼女」
「渚くん」
「すみません気になったもので勝手に入ってしまいました」
「構わないわ、リツコはあなたが入ってくるのを見ていたはずだし」




外がザワザワしてる。
なんだろう。
それより二号機の中って温かいんだなあ…。

「何のために戦うのかな、ここの人って…」

問いかけるように呟けばまたふわりと別の感覚が触れる。

「…うん、そうだね、守るためだね」

その為に犠牲ができるのはなんだか矛盾が起きている。
相手は使途だけれど

「君は人と使途の間なのかな。難しい事はよくわかんないや…」

でもこの温かさは愛情を感じる。
それがとても心地いい。

「私を気に入ってくれたの?私、君と友達になりたいな」

怖かったのに、不思議。
私が乗らなければこの子があんな気持ちになるのかと思うとその方が怖いなって思った。

「きっと誰だって…一人になれても、独りはやだよ…」







「70…超えました」
「どこまで行くっていうの…!?」

ザワつく場内でただ一人、カヲルは口元に手を当ててポツリと呟く。

「凄いな、彼女の心がそれだけ広い…それとも純粋?繊細?…興味があるなあ」
「75%…止まりました」







「長く話してて少し疲れたみたい…またお話ししようね」

どれぐらい話したかわからない。
でも意識を集中させてたから少し疲れが出たみたいだ。
ゆっくりと目を開けばなんだか覚めた感覚。

『音羽ちゃん、お疲れさま』
「あ、はい…終わりました?」
『ええ、もう出て大丈夫よ』
「はい…えーと…どうやって出たらいいですか」
『僕が迎えに行くよ』
「はい、お願いしま…」

音羽はそこまで言うと首を傾げた。
今の声は。と思っていれば開かれるプラグの扉。
開け方よくわかってなくてごめんなさいと思いつつ顔を出してきた相手に思わず小さな悲鳴を上げた。

「ひっ」
「…それはちょっと傷つく反応だなあ…」
「あ、えと、ごめんなさい…」

イケメンが目の前にいきなり現れる事になれていないんです。
と心の中で言い訳しながら差し出された手にたどたどしく手を置いた。

「君に興味が沸いたよ、これからよろしくね音羽」
「へ?よろしく…?」

きょとんとしている音羽にカヲルはにっこりと笑みを浮かべた。


「君はシックスチルドレンとしてこの二号機のパイロットに選ばれたよ」
「…はい!?」
「音羽ちゃーん、早く降りてきてー。行くわよー」

ちょっと下で手を振っているミサトを見て音羽は思わず顔をひきつらせたのだった。

「し、シンクロ率いくつだったんですか…」



この時は思いもしなかったんだ。
生きる事の大変さを

こんなにも実感するなんて。








2016.09.19.



拍手コメントで「続きが見たい!」という声が結構ありましたので…
書いてみました。
出てくるわでてくるわ。
私も結構書いてみたかったのかもしれない。
そしてエヴァの小説を書いてて思うのは、なんかあれだ。今まで趣味で書いていた小説とは何か違う感覚で書いている気分になります。なんででしょうね。




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