2nd:原因?
カラン。
今の時代には少し珍しいベルの扉。
「・・・・・」
「そんなに警戒しないで、本当に何もしないから」
「それを感じ取っていたら付いてきていないよ」
カヲルの言葉に音羽はきょとんと目を瞬かせた。
どうやら思った程警戒はされていないらしい。
「それにどの道君達について行かないと途方に暮れてしまうのも事実だしね。今まで声をかけた人達はテンションが高くなり写真を撮ってサヨナラみたいな感じでキリがなかった」
「・・・・・・・」
カヲルの言葉に音羽と希美は
「そりゃそうだ」
としか言えなかったのである。
「コーヒー下さい」
「僕も」
「じゃあ私はロイヤルミルクティー」
「あ、僕は、その…」
「遠慮しなくていいよ碇シンジくん。ここはお姉さんの奢りだから」
戸惑うシンジに音羽は落ち着かせようと穏やかに微笑う。
その表情にシンジは顔を微かに紅くさせた。
「えと、でも、その」
「そういえばこっちに来てからどれぐらい経つの?」
希美が肘をテーブルに乗せたまま乗り出す。
「朝に平原みたいな所で目が覚めたからここに来て半日程だよ」
「なら朝から何も食べてないという事になるわ、もう夕刻だし二人とも食事も頼みなさい」
「あの、でも…」
シンジはちらりとカヲルのほうを見る。
それに気付いたカヲルはいつもの笑みを浮かべると口を開いた。
「大丈夫だよシンジくん、この2人から悪意や敵意は感じられない。どうやら僕らを知っているようだし」
「そ、そうじゃなくて、というか僕らを知ってるって事は、その…」
シンジの言葉にカヲルは不思議そうに首を傾げた。
その様子に音羽はなくとなくピンときたのか口を開いた。
「知ってるわ。あなたがサードインパクトを起こしたことも。その罪に押し潰されそうなのも。そして渚カヲルとエヴァに乗りフォースを起こしたことも」
音羽の言葉にシンジは激しく肩を揺らす。
カヲルはカヲルで目を見開いて音羽を見ていた。
「でも私達はその世界にいた人間じゃない。……誰も貴方を責めないわ」
音羽の言葉にシンジは涙をボロボロと流す。
「何故貴方達を知っているか。その説明をする前にきちんと腹ごしらえしましょ。お腹が空いてちゃ集中出来ないし」
音羽の笑顔に希美はため息をつきながら笑を浮かべる。
音羽の言葉にシンジも少し落ち着きを取り戻し安心したのかお腹からグゥ。という音が響く。
それによりその場にいた全員が笑顔になった。
「さて、説明だけれども…」
全員の食事が落ち着いた所で音羽は口元をペーパーナプキンで拭い改めて2人を見る。
「多分、混乱してしまうかもしれない。でもこれは全て事実」
音羽は鞄の中からブルーレイケースと1冊の漫画を取り出し二人の前に置いた。
「音羽持ち歩いてんの?ウケる」
「希美さん空気読んでください今日はたまたま持ってたの!」
張り詰めてたはずの空気が一瞬で緩む。
音羽は顔を赤くさせるもすぐに咳払いをした。
「まず。貴方達を知っているのはこれらを媒体にして見ていたからよ」
「へえ…」
カヲルは漫画を手に取りパラパラと眺める。
「なるほど、隅から隅まで描いてある。というわけかい?」
にしてはこの僕はなんだかスレているようにも見えるけど。と再びテーブルに置いた。
「ええ。でも漫画と映画では尺の問題か少し性格が違うのよね」
音羽とカヲルの会話にシンジは既についていけないのかただ疑問符を浮かべる。
「そこで、この映画版」
音羽はブルーレイディスクの入ったパッケージを掲げる。
「これは映画で上映されたものをそのまま円盤に移したもの、コピーとでもいえばいいかしら。貴方達の世界にあったかは謎だけど…」
シンジがカセットテープを携帯して聴いている辺りからそこまで文明が発展しているとは思えない。が、エヴァという文明があるのでないとも言えない。空間に文字を映すなんてこちとら近年だぞと突っ込みたい所だ。
そもそも向こうも2015年とか言っていないか。なんて頭が痛くなってくるのでここで考えるのをやめた。
「つまりこの中に入っている映像が貴方達二人のフォースを起こす所までを描いていたのよ」
「信じられないな…」
「信じられないのはこっちもよ」
本格的に音羽は頭を抱えた。
考えれば考えるほど非現実的。
けれど彼等は目の前にいるのだ。
「でもそんな事を考えたって目の前に貴方達がいる事実は変わらないもの、潔く受け入れるとするわ…」
その話を聞いているだけのシンジと希美はというと
「いやぁ、なんだかハイテクな会話だねえ…」
「僕全く理解できません…」
「少しは理解しようとして…」
二人の言葉に音羽は疲れたのか軽くベタりとテーブルに突っ伏した。
「まあまあ、何かしら君達はこっちにきた。でもその原因は音羽かもねえ」
「は?なんで私なのよ」
希美はちらりと音羽を見る。
その言葉に音羽は顔だけを希美に向けた。
「だって。外せるんなら外してシンジに精神的ダメージを与えるなバカヤロー!。なんて、叫んでからじゃない、映らなくなったの」
「!」
希美の言葉にカヲルは目を見開いた。
何せその言葉は扉が開いていて、かつ自分がお別れをシンジに言っていた刹那に聞こえた言葉だからだ。
「あの声は君だったのか」
「はい?」
カヲルの言葉に音羽は、まさか。と顔を引き攣らせたのだった。
え、原因は私ですか。
to be continue.
2016.08.20.
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