1st:混乱。そして納得

「うーん、本当になんでいきなり見えなくなったんだろ」
「ポルターガイスト?」
「全く別の意味じゃないそれ?」

音羽と希美は二人で学校の帰路についていた。

「入学早々テストって本当音羽の選んだ高校は進学校すぎるよ〜」
「それでも一緒に来るっていったのは希美でしょ。ちゃっかり合格しちゃってるし」
「ま、これでも努力はしてるつもりよー。将来音羽を支えるために」
「…自分の道を選べばいいのに…」
「ふふ、いいの。これが私の選んだ道だから」

希美の笑顔に音羽もつられて笑顔になる。

「にしても今日は来ないの?」
「高校からは来ないようにしてもらってるの。変に目立ちたくないし」
「そっかー、楽でいいと思うけどなあ」
「…嫌よ」
「…ま、中学の時はそれで浮いてたしね」

音羽が顔を顰めるのを見て希美は苦笑いを浮かべながら隣を歩く。

「音羽のこの行動を否定するつもりはないよ」
「…希美はなんだかんだいつもいてくれるのね」
「友達なんだから当たり前でしょー」
「そういうとこ、好き」

音羽の素直な言葉に希美は照れ臭そうに頬を掻いた。

「元気かと思えば大人びて…本当目が離せないなあ」
「希美は気楽すぎて目が離せないと私は思うんだけど」
「え、そう?」
「そう」

他愛のないような、日常のような、そうじゃないような話。
そんな会話をしながら二人してずっと歩く。

「あの、すみません」
「はい」

話していると後ろから声を掛けられる。
すると音羽と希美は二人して目を見開いた。

「ここは、どこでしょうか?」
「うっわ、めっちゃリアル・・・」
「はい?」

呟いたのは希美だった。
その言葉に音羽はコクコクと頷く。

「あの、エヴァンゲリオンのコスプレですか?とてもイケメンでビックリしました」
「え、あの、えっと?」

音羽の言葉に目の前にいた少年はとても不思議そうな顔をしていた。

「声も似てて凄い、今日はイベントか何かですか?道に迷ったんならこの辺熟知してるんで全然教えますよ」
「ごめんね、君たちが何を言っているのか正直よくわからないんだ」

音羽が声を掛けていた少年を庇うように銀髪の少年は前に出て言葉を繰り出した。

「え、エヴァンゲリオンのシンジと、カヲルのコスプレですよね?」
「君はどうして僕達の名前を知っているのかな?」
「え、知ってるって、あれだけ有名なら知らない人はあまりいないんじゃ…」
「有名?」
「ちょっと音羽…おかしくない」
「…うん…」

カヲルのコスプレであろう格好をしている人の言葉に音羽が疑問を持ち始めた頃、希美は音羽の服を引っ張りこそっと声を掛ける。

「キャラになりきってるにしてもイベント会場でもないのにやっても無駄だし、あのカヲル側の人、オーラからもう警戒心凄いというか…」
「だよ、ねえ…?」

チラリと二人してもう一度カヲルを見る。

「話は終わったのかい?」
「…もうちょいタンマ」

希美が手を上げながらそう言うと再び顔を寄せる二人。

「声も本人様では?」
「正直言ってリアル中学生であんなイケボ出せるなんて思ってないんだけど私」
「女性にしては骨ばってるし、ごめん音羽私本人にしか見えなくなってきた」
「いやいや落ち着こう希美さん。そんな事ってある?そんなの二次創作だけでの話だと思うわ」
「だってさ、シンジのあの不安そうな顔とか、それを庇うようなカヲルとか、リアルすぎない?」

音羽は何かを決意したように二人の方を見た。

「もういいのかい?僕らはより多くの情報が欲しいからこんな所で時間を喰っているわけには…」
「あの、ドッキリとかじゃないですか?」

音羽のその言葉に場は一瞬静まり返る。

「…ドッキリっていうのはなんだい?」

その反応をじっくりと見定めるように眺める音羽。

「…希美、どう思う?」
「いやぁ、この反応はもう本人としか」
「・・・・・」

音羽は口元に手を持ってくると真剣な眼差しで考え込む。

「…向こうから聞き出すよりは、こっちから、かな…」
「音羽?」

音羽の言葉に希美は不思議そうな顔をする。

「ごめん希美、シンジの耳ふさいでて貰っていい?」
「え、うん」

音羽の言う通りにシンジの耳をふさごうと希美は近寄るが、カヲルがそれをさせまいとシンジを抱き寄せる。

「渚カヲルくん。君の為を思って言っているんだけど、いいの?」
「僕の為?何を言っているんだい君は?」
「あなたシンジに自分の正体言ってるの?」

これは賭けだ。
もし彼らが本当にエヴァの世界から来たとして、小説でいう逆トリップというやつが起きてしまったのなら。

どこの、二人だ。
それが知りたい。

「…っ!」

ザワッ。とカヲルの気配が変わるのがすぐにわかる。音羽は昨日から映らなくなった映画の画面を思い出し、すべて繋がったかのように納得のした顔をする。

「確か映画版ではシンジは知らないはず…なるほど、そういう事、ね」
「あー…」

音羽の台詞を聞いて希美もわかったのか納得のした顔をした。

「何を知っている、リリン」

納得している音羽達とは裏腹に、明らかな敵意を向けるカヲルに音羽は苦笑した。

「そんなに怒らないで渚カヲル。これから説明するから」

なんて事だ。
まさかこんな事が起こりうるなんて。

「とりあえずどこかの喫茶店にでも入りましょう、大丈夫。この世界は君たちのいた世界よりとても平和だから」





さて、まずはどうやって彼らの警戒心を解こうか。






to be continue.
2016.08.19.

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