8th:携帯ショップへ

「音羽、まだ気にしてるのかい?」
「今整理するのに必死なのカヲル…」

音羽達は帰り道を4人でそれぞれ話しながら歩いている。

「まさかの高校で、しかも同じクラスに手配されるなんて普通思わないでしょう…」

ブツブツと音羽は呟きながらも理事長にまんまとやられたと頭を抱える。
あの人はたまに突拍子もないんだ。と呆れているようにも見える。

「音羽はあの理事長と知り合いなのかい?」
「お父様と顔見知り。となると私も面識はあるのよ」

そういう会場みたいなのにはやっぱり行くからね。と音羽は苦笑いを零した。

「たまに何考えてるかわからないのよね、あの人」
「まあ考えすぎても仕方ないよ、もう決まったことだからね」

カヲルはそう言うといつまでも顎からはなれない音羽の手を取って引っ張る。

「カヲル…」
「こっちにきてまだ1日しか経ってないけど、君はなんだか放っておけない子だね」

カヲルはそう言うとクスリと笑う。
希美とシンジはというとそんな2人をジッと見ている。

「…なんか、バカップル見てる気分」

カヲルの台詞が浮くわー。なんて呟いて希美は先程買ったアイスをシンジに渡している。
シンジはそれを何の違和感もなく受け取り自分の口元にいれた。

「こっちにきてから僕には新鮮なことばかりで、他の事に目が向けられません…」
「あら大丈夫。私が見てあげるから」

希美はそう言うとシンジの頬を軽く抓ってはにひりと屈託のない笑みを向ける。
それを見てシンジが赤くなったのは誰もが想像できるだろう。

「あ、着いたわよ」

音羽の言葉にその場にいた全員が立ち止まる。
携帯ショップ。
今や何処でも売っているもので、そんなに歩かなくて済むので便利になったものだ。
中に入って何がいいかと見渡せば、店員さんが笑いながら寄ってくる。

「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
「スマホをこの2人に買おうと思っているんですが、初心者にオススメのモノってありますか?」
「そうですねー、それなら…」

音羽と店員さんの2人はもくもくとお話をしている。

「カヲル、シンジどれがいい?」

模造機を何台か持ってきた音羽。カヲルはそれを眺めるが、どれに対しても首を傾げた。

「気に入らなかった?」
「いや、僕はどちらかというとあれが気になったんだ」

カヲルが指指した方向にあるのはEPhone。

「え、EPhoneがいいの?」

店員さんがオススメしてくれた物じゃない為、使いにくくないだろうか。と心配する音羽。

「ダメかい?」
「ううん、カヲルがいいならいいよ」
「うん、シンプルな感じがいいと思って」
「試しにさわってみますか?」

店員さんに言われカヲルは大人しく付いていく。

「シンジはどうする?」
「僕は…希美さんと同じものがいいな」
「お?」

希美はシンジの言葉にきょとんとする。

「同じ機種だと教えて貰いやすいと思って」
「ああ、なるほど」

なら同じにしよう。と希美はシンジを連れて自分の機種を探しに行った。
音羽はと言うとそのままカヲルの側へと寄って一緒に定員さんと話を聞いている。
カヲルは学習能力がいいからか、すんなりと理解しているようで。

「どう?」
「うん、やっぱりこれがいいな。こんなに薄いのに色々できるんだね、リリンの知識はここまで発展するんだ」
「カヲル、割と有名とは言ったけど、こっちではリリンを人類と理解する人少ないから」

顔を近づけヒソヒソと声を潜めて話す。

「おや、そうなのかい?」
「私も知った当初は何の事言ってるのかサッパリだったわ」
「じゃあ人間と言おうか」
「他の人からすればカヲルだって充分人間なんだけどね…」

音羽はなんだかおかしな気分になる。
こんな話をする日が来るなんて誰も思わないだろう。

「店員さん、じゃあこれと…」

シンジ達は決まっただろうかと音羽はくるりと後ろを向く。
するとベストタイミングと言うように希美とシンジがコチラに向かってきていた。

「あちらのスマホ。お願いします」

音羽が登録を済ませ、その間に希美達はカバーや保護シートを選ぶ。
名義はもちろん父親。先程電話で承諾済みだ。

「それではこちらでお間違えがないかの確認をお願いします」
「大丈夫です」

確認を済ませると店員さんは袋の中へとそれぞれ入れ、音羽に渡す。

「ありがとうございました」

自動ドアの音が響く。同時に4人は外へと出た。

「はい、カヲル」
「ありがとう」
「シンジも」
「あ、ありがとう」

二人はスマホを受け取ると少しばかり嬉しそうにした。

「あ、私たちの番号も登録しないとね、どこかファミレスでも行きましょう」

夕食までの軽い間食には丁度いい時間だ。と音羽は腕時計を眺めながら呟いた。

「そういえば僕前に目の前を通った時に期間限定のパフェが気になってたんだ」
「シンジって何気に女の子っぽいよねえ」
「えっ!?」
「いいんじゃない?希美は男の子っぽいんだし」
「ちょっとおそれどういう意味?」
「そのまま」

音羽と希美はクスクスと笑い合う。
そんな二人を微笑ましく男子組は眺めていた。

「…カヲルくん」
「なんだい?」
「…凄く、居心地がいいね」
「…そうだね、不思議と僕もそう思うよ」





目の前で笑う彼女に
ここに来てよかったと思う自分がいる。



こんな気持ちは初めてだ。





to be continue.
2016.08.27.

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