あしたも、きらい。
3/8


モヤモヤした気分で1日を過ごして家に帰ると、ちょっと怒ったママが待っていた。

「ミヤ、朝の態度は良くないなあ。パパ、悲しそうだったよ」

「……ごめんなさい」

手を腰に当てて、ダイニングで仁王立ちしているママに、素直に謝る。
ママを怒らせたかったわけでも、パパに悲しい顔をさせたかったわけでもない。
結果的に、そうなってしまったわけだけど。
するとママは怖い顔からニッコリ笑顔になった。

「反省してるなら、よろしい。さ、おやつにしよっか」

ランドセルを部屋に置いて戻ってくると、テーブルの上には、ママ手作りの、あたしが大好きな紅茶のシフォンケーキがあった。

「そうだ、今度の日曜日にね、パパが一緒に出かけようって」

ケーキに飛びつくあたしに、ママがテンションの下がることを言う。

「えぇぇぇぇ」

「嫌なの?」

「……いやっていうか……」

フォークをつきさしたまま、手が止まってしまった。

「昔は、パパのトラックに乗ってよく出かけたじゃない。おしごとついていくーってワンワン泣いてさ。仕方ないからパパが社長さんに頼んで、夏休みに乗せてもらったでしょ」

「1年生の頃の話でしょー。もう、そんなこどもじゃないもん」

「なーに言ってんの、まだまだこどもじゃないの!」

どうしてママたちは、ほとんど覚えていないような昔のことをほじくり返しては、懐かしそうにニヤニヤと笑うのだろう。
そんな昔のことを言われても、こっちは困ってしまうだけなのに。
フワフワのケーキを、口の中に放り込む。

「小学校最後だから、パパが連れて行きたいところがあるんだって」

それまでのふざけた表情から真剣なものに変えて、ママが言う。

「……ママも?」

聞くと、ママは唇を突き出して、こどもみたいに不満顔。

「パパは、ミヤと2人っきりがいいんだってさー。パパはママの旦那さんなのに、ミヤの方がいいんだってさー。ずっるいなー」

文句を言いながら、すかさずあたしのケーキから一口分取る。ママのが、ずるい。

「パパと2人っきりでさ、少しいろいろ話してみたら?」

「する話なんて……ないもん」

「そお?」

意味ありげに笑ったママは、さーて夕飯何にしようかなーと歌いながらキッチンに消えた。


 

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -