あしたも、きらい。
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あーあ。
積もっていた雪も溶けきって、せっかく青空が広がっているっていうのに。
あたしの気持ちはドヨドヨジメジメしてる。
ため息ばかりが、出てくる。
機嫌悪く家を出てきてしまったことを後悔するけど、イライラでドヨドヨでジメジメな気持ちは消えない。
昔は、ママよりもパパと一緒にいる方が好きだった。
パパは仕事が忙しくて、学芸会や運動会、授業参観にはほとんど来たことがなくて。
だから、たまの日曜日にパパと過ごせることがうれしくてたまらなかったのに。
だけど、いつからかパパのことがなんだかいやになって。
近寄られるのがいやで、注意されるとムカッとしたり。小さなことが気になりはじめて。
学校で何かある時にも来てほしいとは思わなくなった。
なんでだっけ。
どうしてだっけ。
重い気持ちを抱えながら足元を見つめて歩いていると、

「おっはよー! どしたどした暗いよミヤ!!」

勢い良くランドセルに体当たりされた。振り返ると朝からニッコニコなサエちゃんがいた。

「おはよう。……朝からパパと会っちゃってさ」

「ミヤのパパってトラックの運転手さんだっけ?」

ため息まじりに答えるあたしに、サエちゃんは明るく聞いてくる。

「うん。いつもは夜中に出かけてるからいないか、いても寝てるのにさあ」

「サエんちは、いっつも朝ごはん一緒に食べてるよー。部下が言うこときかないって文句言ってるの聞かされるから、本当はイヤなんだけど」

イヤと言いながらも、サエちゃんはパパのことが大好きだといつも言っているから、嬉しそうに笑う。

「ミヤちゃんのパパ、いっつもスーツでかっこいいよね」

「そう? パパにあわせて作ってもらってるからかなあ? お店で売ってるのじゃ、安っぽくてダメなんだって」

「そうなんだーうちのパパはスーツなんて着ないからなあ」

あたしだって、パパがサエちゃんのパパみたいにかっこよかったら、いつだってシュッと背中がまっすぐに伸びているようだったら、いやだなんて思わなかったのかな。
パパは、いっつもかっこわるいんだもん。
今朝だって、着ているのはヨレヨレのスウェットだったし。
ひげもチョボチョボ伸びたままだったし。
今朝のパパの姿を思い出してモヤモヤとした気持ちでいると、ふっとあたしの耳に聞こえてきた音があった。
教室いぱいに響く、クラスメイトの笑い声。
その声に、はずかしくって、胸がぎゅうってしめつけられるみたいだったのを覚えている。
あ、って思った。パパをいやだと思ったのは、あの時だって。

「そんなことよりさあ、昨日のドラマ見た?」

サエちゃんが俳優さんの誰それがかっこよかったなんて話をしているけれど、あたしはただウンウンとうなずくだけで、話の内容は耳に入ってこない。
頭の中を通り過ぎていったのは、勢い良く教室の扉を開けた、作業服のパパの姿だった。他のパパやママはきれいな服で授業参観に来てくれていたのに、仕事からかけつけたばかりのパパは、汚れた作業服のままで。
クラスのみんなが笑ったのは、突然先生のいる方の扉をパパが開けたからで。
だけど、あたしにはその時のパパの姿がすごく恥ずかしく感じられたんだ。



 

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