Side.Harry
「アイツ、自分がスネイプの娘だからって、いい気になって威張り散らしてんだ。だからマルフォイなんかと仲が良いんだよ」
「そうかな?僕は、リクはそんな子じゃないと思うけど…」
初の魔法薬学の授業の後。ロンがマルフォイやリクの事で愚痴を溢すのを、僕は内心複雑な思いで聞いていた。と言うのも、僕自身はリクをそこまで嫌ってはいないからだ。リクは、僕にとって始めて出来た友達だ。寮こそ違えてしまったけれど、出来れば彼女とは仲良くしたいし、これからも友達でいたいとも思ってる。
でも、ロンの方は僕とは違って、リクの事はあまり好きじゃないみたい。この調子だと、ロンは下手をすると、リクをマルフォイの次位に気嫌いしているのかもしれない。
現に、僕がリクを庇うと、ロンは信じられない!とでも言いた気に瞳を驚きに見開き、さらに怒気を荒げ始めた。
「何言ってんだよ!スネイプの授業であんなにも奴等は贔屓されてたじゃないか!」
「でも、リクは獅子寮のネビルを助けようとしてたよ?」
「アレは、ああすれば目立てるとか思ったからやっただけだろ?…いや、よく考えてもみろよ。そもそもアイつがネビル達の薬にちょっかいを出して、薬は爆発したんだ」
あれは単に意地悪で止めようとしたのでは無く、ネビルが針を入れる手順を間違えていたから、リクは止めようとしただけではないのだろうか。実際に、針が投与された後、薬は爆発して溶解していた。怪我を負ったのだって、飛び散る薬からネビルを庇ったからだ。マルフォイ達の様に、本当にネビルを馬鹿にしていただけなら、普通相手を庇ったりなんてしないと思う。目立ったり、点を稼ぐ為にネビルを庇って怪我をするなんて、割に合わないし。だからアレは、リクが本当にネビルの事を心配しての行動だったと、僕は思うんだけど……
「つまり、アイツはわざとネビル達の薬を失敗させて獅子寮の減点を狙った可能性が高いんじゃないか?!」
『それは酷い誤解だよロナルド・ウィーズリー』
「「!?」」
突然背後から掛けられた声に、思わず肩が跳ね上がった。驚いて反射的に振り返ると、そこには苦笑を浮かべるリクがいて、僕は愕然とした。ああ、どうしょう!彼女とは仲良くしたいって考えてた矢先に、今の話を聞かれてしまうなんて!
『まあ、セブルスがドラコを贔屓してるのは否定しないけど、少なくとも私に関してはあまり贔屓されてないよ』
「リク、その…怪我は?」
『大丈夫。大した傷にはならなかったよ』
そう言って笑ってくれたリクの笑顔に、嫌われたらどうしょうと焦っていた僕は、少しだけホッとした。ロンには悪いけど、ロンと一緒に僕までリクを嫌ってるって思われたくなかったから。
『これから二人で何処か行くの?』
「ハグリッドにおt…「お前には関係ないだろ」
ロンに遮られてしまった。ハグリッドとリクは知り合いだし、せっかくの機会だからリクも一緒にお茶会へ行こうよって誘いたかったのに!ロンの気持ちも分からなくは無いが、ロンに対して少しばかり殺意が芽生えた瞬間だったりする。
リクの方もロンの気持ちを察してか、シュン…と悲し気に俯いた。かと思えば…
『えぇー…何だか風当りが冷たいよロン』
「どうせお前もハリーが目当てなんだろ?」
『まぁ確かにハリーやネビルは可愛いから否定はしないけど、悪戯仕掛け人ズとマブダチな私にソレを言うのかい?』
「余計に質が悪いよ!!」
ドヤ顔で胸を張るリクに、ロンがツッコミを入れていた。ああ、落ち込んでいなかった。むしろロンをからかって楽しんでいる風にも見える。リクに可愛いと評されて、男としてのプライドがちょっと悲しいけど。
『うわーん、ハーマイオニー!ロニャルドが冷たいよー』
「ブフっ」
「誰がロニャルドだっつ!お前も笑うなよっつ」
これには僕も笑いを殺すのが大変だった。ロンは髪と同じ位顔を赤面してるし、あのハーマイオニーですら笑いを堪え切れずに噴き出していた位だ。
リクは蛇寮の生徒なのに、あまり蛇寮生って感じがしないから不思議だ。何だかハーマイオニーとも仲が良いみたいだし。マルフォイみたいなタイプが多い蛇寮生は苦手だし、正直嫌いだけど、彼女だけは少し違う様な気がする。むしろ、どうして彼女が蛇寮に入ったのかが不思議な位だ。出来ればリクとは、同じ寮に…一緒に獅子寮に入って欲しかったのになぁ……
と、ここで此方にリクがいる事に気付いたマルフォイが、僕等の顔を見るなり嫌そうに表情を顰めながら、此方にやって来た。
「リク!傷はもう大丈夫なのか」
『心配してくれて有難うドラコ』
「当然だ。獅子寮にやられた怪我なんだからな」
「なっ、そっちが勝手に首を突っ込んできたんだろ?!」
リクがマルフォイと親し気に話してる姿を見て、やっぱり彼女は蛇寮の生徒なのだと、嫌でも実感させられる。しかもリクは僕達以上にマルフォイとは仲も良さそうで、その事に何だか苛々する。リクと最初に仲良くなったのは、僕の方なのに…
『またね、ハリー。心配してくれてありがとう』
「!」
マルフォイの登場で、何だかすっかり気落ちしてしまっていた僕に、リクが去り際にコソッと囁いた。驚いて彼女を見詰めると、笑顔で手を振ってくれた。
リクが気に掛けてくれていた事に気付いて、何だか嬉しくなった。たった一言、お礼を言われただけなのに、何だかそれがとても特別な様に感じたんだ。