Birthday Present
『セブ―、見てみて!ホグワーツから入学許可証が届いたよっ!』
ちょっと高級そうな封筒に入っていた許可証を朝食中のセブルスに見せながら、リクもテーブルに着いた。映画の前売り券じゃない、本物だ。
「お前にも魔法の才能があるのだから当然だ」
『何と言っても、ホグワーツで教師を勤める魔法薬学教授の娘だもんね』
まるで自分の事であるかの様に誇らし気に微笑むセブルスに、リクもまた嬉しくて笑顔を浮かべた。今日もセブの笑顔は素敵です。
「中に必要な学用品のリストが入っているだろう。今度買いに行くか」
『うん!』
と、そんな会話をしたのが今から数日前の事。
そして本日ダイアゴン横丁で入学準備品を一通り買い揃え、後は入学式の日を待つだけとなった。どう見てもただの棒切れにしか見えない魔法の杖を手に入れた私は、早速マイ杖を使って、教科書片手にセブの前で魔法を披露して見せた。
『ウィンガーディアムレヴィオーサ!…わぁっ、本当に浮いたよ!!』
まぁ、今まで散々隠れて使ってたけどな!しかも杖無しで。長年のヴォルとの修行の成果である。とはいえ、現段階ではまだまだ新卒の魔法使いレベルの魔法しか使えないけどね。闇の魔術系統以外は。
「リク、」
『?はーい』
セブルスに呼ばれて、魔法で浮かべていた物達を元の場所に戻してから、彼の許まで歩いて行く。そこでつい先程迄は何も無かった筈のテーブルの上に並んだ料理とケーキを見た瞬間に合点がいき、思わず頬が緩んでしまう。
「誕生日おめでとう、リク」
まさかのセブルスからのサプライズでした!こういう時に魔法ってかなり便利だしサプライズし放題だよね、と改めて実感。そういえば今日は誕生日だからハリーとドラコに会いにダイアゴン横丁へ行かなくては!って発想はあった癖に、自分の誕生日って部分を完全にスルーしてしまっていたよ。ハリーにハピバとか言ってた癖にね。
「それから、これはお前に誕生日プレゼントだ」
『!有り難うっ!!』
お洒落にラッピングされた、小さな箱をセブルスから受け取る。開けていい?とセブルスに尋ねると頷かれ、ドキドキしながら包みをほどいていく。小さな箱という時点で参考書の可能性は消えた。ならば珍しい魔法薬学の材料か?なんて子供らしさの欠片もない(しかしセブルスからの贈り物らしさは満載な)中身の候補達を思い浮かべていたリクだったが、今年の誕生日に関しては、そんな幻想はイマジンブレーカーよろしく見事に打ち砕かれた。勿論良い意味で。
セブが誕生日プレゼントにくれたのは、綺麗な翡翠色の石が填められたネックレスだった。もしも私が年相応だったら、ちょっと背伸びした気分になっていたと思う。なかなかにニクイ事をしてくれるぜセブルス!翡翠…というか、緑色の石なのが何ともセブらしい……いやいや、セブのリリーへの愛が伝わって良いじゃないか!セブリリラブ!まぁそれ以上に単純に嬉しいから許す!
「本当は、お前の母親の結婚祝いに……送ろうと思った物だった」
『え?』
「結局、あの頃は贈る事は出来なかったんだがな…」
セブがリリーの話をするのは珍しい。私がせがんで聞かせて貰ったり、セブが子供の頃の思い出話をしてくれたりする時位だ。しかも、結婚祝って……セブルスとしてはかなり辛くて複雑な心境だったであろうに。
『そんな大事な物を、私に?』
「私が持っているより、お前が持っている方が良いと思ってな。…すまない。嫌だったか?」
セブルスの何処か気遣わし気な表情に、リクは首を横に振る。
『セブルスがお母さんを大切に想っててくれた証だから……私も大切にしたい』
真っ直ぐな貴方の想いを、大切にしたいから。