ダイアゴン横丁


「君の両親も僕らと同族かい?」

『うん。魔法族だよ』



いきなりこんにちは。ホグワーツに入学するに当たり必要な教材やら道具やら何やらをダイアゴン横丁へ買いに訪れ、マダム・マルキンの洋装店で制服の採寸をして貰っていたら、偶然マルフォイことフォイフォイと出逢ったリク・スネイプです。それにしてもフォイフォイさんは素敵なオールバックですね。将来前髪が後退しないか不安です。……あ、未来では実際にしてたか。残念無念。以降、BGMはスネオが自慢する時に流れるBGMでお送りします。



「やっぱりホグワーツへの入学は昔からの魔法使い名門家族に限る巾だと思うね」

『あー、私の知り合いも昔同じ事言ってたよ』

「良識のある魔法族の人間なら当然の意見さ。僕も入るならスリザリンだね。僕の家族も皆そうだったんだから、決まってるよ」

『そうだね。君をスリザリンに選ばずして一体誰を選ぶって感じだし』



いや、今のは誉めてないよ。別に貶した訳でもないけど。だからそのドヤ顔は止めようか。



「君はどの寮に入るか知ってる?」

『それは組分け帽子のみぞ知る所だろうけど……個人的には、レイブンクローとかハッフルパフは平和そうだよね』

「オイオイ正気かい?君はそんな所に入りたいの?」

『いや、希望はグリフィンドールかスリザリンかな。あー…でもグリフィンドールも微妙か…』



楽しそうだけど、確実に厄介事に巻き込まれそうだ。スリザリンでフォイフォイ弄りやセブとの陰険ライフも捨てがたいし。自分のこういう思考はスリザリンか。

ちなみにフォイフォイは当然の反応だね。と、何を勘違いしているのやら。そんな事を言ってきた。可愛い奴だな。

それにしてもフォイフォイはよく喋るなぁー……私が口を挟むのも一苦労だよ。いかにもボンボンの一人息子って感じの話し方だし。実際にそうなんだけど。本来なら、この手の相手の場合は下手に口を挟まずに自慢話を聞いてあげるのが賢いやり方なんだろうけど……生憎、フォイフォイを弄ってやりたくてウズウズしてる私には無理な相談だ。むしろ、今回はまだ初対面だから弄るのは止めてあげたんだからね!



『ま、入学したら(絶対に弄ってやるから)ヨロシクね』

「ああ。君とは良い友達になれそうだよ」

「(いや、コイツと友達になるのは止めた方が…)」

『(寂しい事言わないのヴォル。マルフォイが可哀想でしょ)』

「(いや、可哀想なのはソイツだろう)」

『(おいコラどういう意味だ)』



ヴォルとの精神会話中の私を第三者が端から見たら、私は確実に変な子だろう。幸い声には出していないものの、どうやら顔には出てしまっていたらしく、マルフォイと別れて店を出た際に、道行く人々に怪訝な顔をされた。うむ。額に傷とか無くて良かったとちょっと思ってたり。傷の有無に関係なく、十分悪目立ちしてて既に手遅れな気はしたけど気にしない。きっと気のせいさ。

ちなみにセブルスは漏れ鍋でクィレルと話があるとかで、先に行ってる様に言われたから今は私一人なのです。多分セブルスは、クィレルと話があるって言うのはあくまで口実で、実際はノクターン横丁の方に行く予定があるのだろう。まぁ私もダイアゴン横丁には今までにも何度か来てて慣れてるから一人でも大丈夫だけど、ちょっと寂しいぜ!

テキトーに好みのお菓子を買って、店をぶらつきながらリストを見て必要な物を買い揃えて行く。杖選びにはセブも行きたそうな顔してたから、それ以外の店を先に回って行く。次にやって来たのは本屋だ。ちなみに、セブルスとの待ち合わせの場所でもある。

教科書を買った後は、新しく面白そうな本は入っていないかチェックしていく。



『(うーん…やっぱり、品揃えはノクターン横丁の本屋には劣るね)』

「(危険な闇の魔術に関連する書物がこんな往来に陳列されていたら、世も末だろう)」



ヴォルの意見はもっともである。いや、私も分かってて言ってみただけなんだどね。

セブルスは知らないけど、実はノクターン横丁ではちょっとした常連なんだよね、私。勿論念のために軽く変装しては行くけど。セブルスは私を闇の魔術にはあまり関わらせたくないらしく、ノクターン横丁にも連れて行ってくれない。私もセブルスの前では闇の魔術は使わないし、ヴォルと精神世界で教えて貰ったりする位だ。実は結構自信もあったりするんだぜ!

そんな感じだから、ここの店に並んでる本のレベルの呪いなら、杖無しでも朝飯前なんだよね―……と、



「『…あ』」



てきとうに本の背表紙を順番に触りながら辿っていたら、誰かと手が重なった。隣を見ると、同い年位の少年が私を見て驚いた顔をしていた。一体どこのラブコメ!?と内心テンションが上がったのは私と不本意ながらもヴォルとの秘密だ。



「ご、ごめんなさい!」

『いえいえ、此方こそ』



慌ててパッと手を離して謝ってきた少年。恥ずかしそうに顔を赤くして……何だか反応が初で可愛いな。しかし、彼が取ろうとしてた本はヴィンディクタス・ヴェリディアン著【呪いのかけ方、解き方(友人をうっとりさせ、最新の復讐方法で敵を困らせよう――ハゲ、クラゲ脚、舌もつれ、その他あの手この手――)】であり、決して可愛くはなかった訳だが。



『呪いに興味があるの?』

「えぇっと……ちょっと、仕返ししてやりたい相手がいてね」



黒髪で眼鏡で大人しそうな感じの子なのに、ちょっと意外だ。額に稲妻型の傷痕があるから、その傷痕の仕返しにだろうか……って、ちょっと待った。



『成る程ね〜……でも、この辺に並んでるのは初心者にはちょっと難しそうだから、もう少し下の段にある奴の方が良いかも』

「そ、そうなんだ…」



呪いの本を読もうとしていた所を見られたからか、かなり恥ずかしそうだ。



「君、魔法に詳しいんだね」

『まぁ、多少は……だけど。それより、君も今年ホグワーツに入学する一年生?』

「うん。君もって事は…」

『正解!私もなんだ』



ヘラリと笑うと、少年も安心したのか、彼も嬉しそうに笑った。わぁ〜、さっきのフォイフォイとはまた違った可愛さだよこの子!ちなみに、私は断じてショタコンではない。カッコいいお兄さんも素敵なオジサマもセブも大好きです。キリッ!



『私はリク。リク・スネイプだよ。君は?』

「僕は…ハリー・ポッター」

『じゃあ、ハリーって呼んでも良い?私の事はリクって呼んで貰って構わないから』

「あ…うん。勿論」



ちょっと意外そうな顔をした後、ハリーは嬉しそうに笑った。あの有名なハリー・ポッター様!?って驚かれなかったせいだろうね。フフフ、勿論確信犯ですが何か?

という事で、大変お久し振りです我が兄上よ!



『あ、そうだ。今ちょうどお菓子持ってるから、ハリーにあげる』

「え?良いの?」

『友達になった記念と、誕生日プレゼントって事でどうかな?』

「!どうして僕の誕生日を知って…」

「ハリー!こんな所におったか」



ハリーが私からお菓子を受け取ったこのタイミングで、謀らずしもハグリッドと思わしき人物が登場した。しかも、ハリーの隣にいる私の顔を見るなり驚いた顔をしてリリー…!?って呟いてた。ちょ、ハグリッド、モロバレはやめい!



「ハグリッド、リクと知り合いなの?」

「え!?いや…あー、すまん。何でもねぇ。人違いだ」



やっべぇ口を滑らした!って具合に、あからさまな動揺を見せた後、ハグリッドは取り繕う様に頭を掻いた。

余談だが、ハリーと再会した辺りからヴォルからのツッコミが無くなり急に静かになったのは、恐らく諸事情によるハリーへの気まずさからだと思う。更に追い討ちを掛けるかの様にしてかつて自分が冤罪を掛けて退学にさせたハグリッドの登場により、完全に心を折られたっぽいです。長年のヴォルとの付き合いから、何となく分かる事だったりする。



「あー、いきなり驚かしちまってすまねぇ。俺はハグリッドだ。ホグワーツで森の番人をしちょる」

『此方こそよろしく、ハグリッドさん。私はリク・スネイプです。ハリーと同じで、今年から一年生なんです』

「!スネイプっちゅーと…もしかしてお前さん、スネイプ先生の娘さんか!?」

『はい』



あ、ハグリッドは知ってるんだ。セブルスに養女がいる事。そうか、やっぱりお前さんは…と、何だか涙ぐんでるし………この調子だと、ハグリッドはどうやら私の生みの両親が誰かも知ってて、しかも私とハリーが赤ん坊以来の再会を果たした事にも、感激している模様。どんだけ校長から信頼されてるんだよハグリッド!ハグリッドは決して悪い人じゃないけど、口は軽いんだぞ!?



「そうかそうか……今年からスネイプ先生の娘さんも入学してくるって噂には聞いちょったが…お前さんがそうなんか」

『父子共々、これからよろしくお願いします』



此れから秘密の森に忍び込んだりして、色々と迷惑を掛けるので。という意味合いを込めて深々と頭を下げたら、ハグリッドに礼儀正しい娘さんだと感心された。



「ホグワーツに入学したら、いつでも俺の家に遊びに来とくれ!ハリーと一緒にな」

『はい!』

「あと、俺に敬語やらさん付けはいらん。丁寧過ぎてちと、むず痒いからなぁ」

『じゃあ、ハグリッドって呼んでも良い?』

「ああ。そうしとくれ」



何だか一気にハグリッドとの親密度がアップした気がする。下手するとハリーやフォイフォイ以上に。一体何のフラグだと問いたい。いや、ハグリッドは好きだけどさ。



『じゃあハリーにハグリッド、私はもうそろそろ行くね。セブを待たせてるから。今度は入学式の日に会おう!』

「うん。じゃあまたね!」



ハリーとハグリッドの二人に手を振って別れたて、店を出ると、セブルスが待ってくれていた。何となく嬉しかったので飛び付いてみたら、普通に驚かれた。普段はなるべく自重するように心掛けてるから当然か。



『セブルス!もう用事は済んだの?』

「ああ。待たせてすまなかったな」

『全然!それより、早く行こっ』



何か良いことがあったのか?と尋ねられて、リクは内緒、とだけ言っておいた。何となく、ハリーの名前を出すのを躊躇われたのです。きっとセブルスに複雑な表情をされそうなのは想像がついたし。セブといいヴォルといい、理由は多少違えど、人間関係は複雑なのです。

 

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