9と3/4番線
さぁ、いきなりですが皆さん!ついに今日という日がやって参りました!ホグワーツへ入学の日です。
セブは数日前から新学期の準備で一足先にホグワーツへと戻っているので、現在私は一人で駅に来ております。あ、厳密に言うと一人じゃないよ。私とニ心同体なヴォルも一緒なんだよ!
果てさて9と3/4番線ホームとやらは何処かな?と私が辺りをキョロキョロ見回していたら、何だか強烈な違和感を発する大荷物をカートに乗せた小さな少年を発見した。いや、私もほぼ同じ荷物を持ってるから周りからは同じく注目の的なんだけれども……って、そんな事はどうでも良いや。
人々が行き交う中、何処か茫然と途方に暮れている少年に後ろから近付き、ポンポンと肩を叩けば、彼は驚いて此方に振り返った。
『やぁハリー!また会ったね』
「君は……リク!」
お、覚えててくれたんだ。そう言って笑うと、ハリーも知った顔を見付けてか、安心したように笑った。迷ってるのかと尋ねると、彼も苦笑混じりに頷いた。べ、別に迷ってた訳じゃないんだからね!って否定しない辺り、ハリーって本当に素直だよね。え?私の基準がおかしい?
『9と3/4ホームでしょ?大体10だからきっとこっちだよ!』
「え、でもそっちは8番ホーム寄りだよ、リク」
冷静にハリーにツッコミを入れられた。私が方向音痴なんじゃないよ!駅の構造が複雑過ぎるのさ。
「(其れを世間一般的に方向音痴と言うのでは?)」
『(ヴォルはお静かに。てか、お前案内しろよ卒業生)』
「(さっきも案内した直後に真逆の方向へ進もうとしたのはお前だろ)」
『(だからそれは駅の構造が…以下略)』
「マグルで込み合ってるわね。当然だけど…」
『「!」』
あ、ヴォルと内輪揉めしてたらタイミング良く燃える様な赤毛の団体ことウィーズリー一家を発見しました。これには思わずハリーと顔を見合せ、実に中途半端な乗り場のホームへの入り口を見付けるべく、早速彼等の後を追う事にした。
そういえば何気に双子の顔を見るのも結構久しぶりだ。数年見ない間にすっかり成長しちゃって。にしてもジニーちゃんかわゆすとかなんとか邪念を抱きつつ私がボーっとしてる間に、双子達は先に壁を抜けてホームへ行ってしまった。気付いて貰えなかったか……まぁいいや。後で汽車の中ででも会えるでしょ。
「リク…今の見た?あの人達に訊いてみよう」
『という訳でハリー・ゴー!』
「そんなヒアウィーゴーみたいなノリで言われても…ていうか、上手い事言ったみたいな顔しないで!」
流石我が兄様だぜ!今のはハリーとハリー(急ぐの意)を掛けたんだけど、ちゃんと気付いてツッコミを入れてくれたよ!ヴォルからの冷めた視線を感じるけど気のせいさ。
そうしてウィーズリーおばさんからホームへの入り方を聞いたハリーは、一瞬不安気な顔を此方に向けるも、私が笑顔でGOサインを出したら意を決して柵へと向かって行ってた。流石グリフィンドール生!勇気ある君の行動にリク・スネイプから10点を加点しよう。
「(どうでも良いからお前もサッサと行け)」
最近、ヴォルが冷たいです。
「「リク!?」」
『久し振り、フレッドにジョージ!』
列車の中へ荷物を上げるのに悪戦苦闘していたハリーの後に続いてホグワーツ特急に乗り込むなり、彼の荷物を上げるのを手伝ってくれた双子からのステレオならぬ二重音声で名前を呼ばれました。本当に久しぶりですね。
余談だが、私の荷物は自力(と書いて魔法と読む)で列車に上げましたので問題なかったよ。
「これはまた驚いた」
「我等がリトル・マスターも今年からついにホグワーツへ入学という訳か!」
『フフフ、今年からよろしくお願いしますね先輩!』
「「勿論ですとも!我等がマスター!!」」
ハリー・ポッターとの思わぬ所での邂逅に驚いていた双子だったが、続けざまに私とも再会して更に驚かせてしまったらしい。悪戯も仕掛けてないのにサプライズを成功させてしまうとは。ひょっとしたら自分にはジェームズから引き継がれた悪戯仕掛人の才能があるのでは…?と思ったが、セブから渋い顔をされそうだったのでこの思考は中断させた。その事に対してヴォルがホッとしたとかしなかったとか。
「えー…っと、リクの知り合いなの?」
『うん。前に他人には言えない方法でホグワーツへ行った時に、二人にお世話になったの』
「どんな方法で!?」
方法なんて、そんなの姿現しでちょちょいと悪戦苦闘して、ね。
私と双子の親しげなノリから、ハリーから躊躇いがちに尋ねられた訳だが。この件に関しては話が長くなるので、後でお話するとしようか。