導師と守護役達の日常(2/6) イオンの執務室からの帰り道。廊下を歩いてたら、バシャンッて水が溢れるような音がした。 「きゃははははは!」 「ださ―――い!!!」 次いで、女性特有の甲高い笑い声。曲がり角の先を覗いて見て、何があったのかを直ぐに理解した。 盛大に笑い声を響かせている三人組の導師守護役と、通路の真ん中で頭から水を被った様子の彼女達と同じ導師守護役の少女。 状況から察するに……職場内でのイジメだろう。 「あーあーイオン様の書類がめちゃくちゃ!!」 「やあねぇ!!どんくさい子!!」 どの世界でも、こういう事はあるようだ。クスクスと嘲笑を浮かべる彼女達の声が耳障りだと思うのは仕方ないと思う。 ……ていうかちょっと待て。イオン様の書類って、その中に此方の目的の書類も混じってるんですけど!!(多分) 「だいたいさぁ…幼年学校出たばっかで実績ゼロの子供がさぁ、なんで導師守護役になれる訳?」 「お金でも積んだんじゃないのォ?」 「あらぁ無理よお!!」 大の大人が一人の子供を相手に寄って集って好き勝手言って……こういうのを見ると、少し……否、か・な・りイラっとくる。触らぬ神に祟りなしとはいうけれども。 チラッ、と彼女達の足許に目を向けると、散乱している濡れた書類の他に、空のバケツと何だか見覚えのあるちょっと不気味様な人形が……ん?あれって…… 「だってこの子の両親って……ほら……アレでしょ?」 「あーー、オリバーとパメラね!!」 「そうよねーアレじゃあねぇ」 「ちょっとぉ皆ぁ、そんな言い方、アニスちゃんが可哀想よぉ!!」 あの子アニスか!それなら何故彼女がイジメを受けているのかも納得出来る。 重い病に臥せっていた"導師イオン"が奇跡の復活を遂げたその日に行われた、過去異例の教団内部の大きな人事異動。導師守護役の総入れ替えもしかり。実際に書類にも目を通したけど、"前"導師イオンと少なからず関わりがあった者達は全員もれなく左遷されたっぽいね。私専属のシンクを除いて、アリエッタもイオンの専属を解任になって私専属の導師守護役になってたし。 多分……アニスが唯一導師イオンの専属になったから、妬まれたのだろう。 「あら…何?この汚い人形!!」 グシャ!! 「『……!!』」 トクナガぁああああ!!!と、内心叫ぶ。導師守護役の一人に足蹴にされたトクナガの中身(綿ね、綿)が、無惨にも飛び散る。 トクナガ(アニス)をプレイキャラにしてバトルした事がある位、私にはトクナガに愛着がある。そんな私情を抜いたとしても、いくらなんでも、これはやり過ぎだ。流石の私も、不快過ぎてキレる一歩手前。 いい加減止めに入ろうと思った矢先、 「何をしているんです?」 ……新たな第三者の声が、彼女達の間に割って入って来た。 片手で前髪を掻き上げ、彼女達の前へ華麗に参上したのはガイ……ではなく、ディストだった。 「ゲッ!!死神ディスト」 「行きましょ!!変人がうつる!!」 『止まりなさい。そこの三人組』 「「「!!」」」 バタバタと慌ただしく此方に向かって逃走してきた三人組が私の目の前……曲がり角を曲がって来た所で、私は彼女達を呼び止めた。 最近気付いたけど、どうやら私は沸点が低いらしい。アッシュ程じゃないけど。 *前 | 戻 | 次#
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