強さを求めて(4/5)


「一人を相手になんて様だ。情けない」



私にのされた士官候補生達に叱責を飛ばすカンタビレ教官。結論から申し上げますと……私が圧勝してしまいました。流石に10人を相手にしたら息が上がった……しかも一度に。スパルタの域を越えて、もはやただのイジメじゃないかと思う。



「しかし……お前はなかなかやるじゃないか。見直したよ」

『えーっと…有り難う御座います……?』



あまり褒められてる気はしないが、礼は言っておく。というか、自分でも少し驚いてたりする。



「そうだな……お前は左側から狙われた時の反応が僅かに遅い。任務中は常に注意を怠るな。それから、回避行動を取る時の動きに無駄が目立つ。最小限の動きで対応するよう心掛ける事だ」

『…!はい!』



あ……けど、ちゃんと見ててくれてたんだ。てっきり嫌がらせ紛いの模擬戦だけで終わるのかと思っていた為、的確な指摘を貰えた事に対し、少し……いや、かなり驚いてたりする。



「アンタの実力なら、教団兵を相手にしてもお釣りがくるだろうね」

『いえ、流石にそれは……』



えええ……マジですか。何気に私って最強設定?なのだろうか。興味を持たれたのか、私の顔を見ながら何故か楽しそうな笑みを浮かべるカンタビレ教官。お世辞……で言ってる訳でもなさそうだ。いや、過信は禁物だし……うん。やっぱり何事にも慎重にいこう。



「今日の指導は以上だ。明日も今日と同じ時間に特別訓練をやるよ」

『はいっ!カンタビレ教官、今日は有り難う御座いました。明日も宜しくお願いします』



カンタビレさんに頭を下げて、その場から失礼……しようかと思ったけど、一旦足を止めた。あ……回復、した方が良いよね。相手して貰ったんだし。

負傷した士官候補生達の方を見て、少し申し訳ない気持ちになる。



『(……出来るかな?)』



空気中の音素を感じ取りながら、ゆっくりと目を閉じる。

譜歌に込められた意味や象徴、叡智の地図(だっけ?)とか、細かい事は知らない……けど、何となく……感覚だけでやってみようと思う。勿論駄目元で。



『リュオ レィ クロア リュオ ズェ レィ ヴァ ズェ レィ…』



奏でる旋律は第四音素譜歌……女神の慈悲たる癒しの旋律、リザレクション。広範囲の譜陣が展開されると同時に、士官候補生達が負っていた傷が癒えていく。おお、成功したんだ!



「アンタ、音律士だったのかい?」

『へ?あ……いえ。少し聞きかじった程度です』

「それにしちゃあ随分と効果が高い譜歌じゃないか」

『は、はははは……』



……此れからは軽率な行動も控える様にしようと思います。士官候補生達の驚いてる視線や、訝しむカンタビレ教官の視線に、サクは渇いた笑みを浮かべた。



- 38 -
*前 | | 次#

(4/5)

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -