強さを求めて(3/5) 所変わって、神託の盾騎士団本部にある地下の訓練場。 強くなりたい。確かに私はイオンにそう言ったよ。その言葉に嘘偽りは無いよ。けど、あの時私はこうも言った筈だ。 護身術を覚えたいんだと。それが何故……いきなり士官候補生とのガチバトルに? 「どうした?その導師守護役の団服はただのお飾りか?」 全くもってその通りです。導師の身分を隠す為に導師守護役の制服+仮面を身につけてるだけなんで… 「私は実力主義だ。教団には導師のコネで入れたかもしれないが、実戦ではそんなコネは通用しない。お前も一般兵も基本は同じだ。導師守護役なら、導師を守り切れる強さがなければ意味がないのだからな!」 いや、本職はその守られる側の導師です……とは言いたくても言えない現状。畜生、イオンに嵌められた。 「仮にも導師守護役……戦い方の基礎位は知っているだろう。ならば、あとは実戦あるのみだ」 鬼ぃいいいいっつ!!!カンタビレ教官っ!実力主義なのは知ってたけど、だからコネで入団した人達とかが嫌いなのも知ってたけど、けど!! クソッ、イオンの野郎……こうなる事を予想して、面白がってカンタビレさんに本当の事を説明しなかったんだな。 イオンに人を紹介して貰うという、暴挙に出た数分前の自分を殴ってやりたい。が、今更嘆いてもどうしょうも無いので、いい加減腹をくくる事にする。 どちらにしろ、物語が始まりを告げる迄には私もある程度実力をつけておく必要がある……じゃないと、足を引っ張る事になるからだ。 「どうした?候補生ごときを相手に怖じ気付いたか?」 『いえ……やります』 カンタビレがニヤニヤしながら問うて来るのに対し、私は頭を横に振る。そして予め渡された木刀を握りしめ、真っ直ぐに相手の士官候補生を見据えた。相手が教団兵じゃないだけまだマシか……いや、むしろこれは嫌みか。 ろくに戦えず、士官候補生に負かされる導師守護役……恥とか屈辱云々の前に、導師守護役に不適切な気がするぞ。ていうか、むしろ神託の盾騎士団を首になりかねない気が……まあ良いや。別に本職じゃないし。それ以前に私導師だし。 「譜術の使用は無しだ。始めっ!」 カンタビレの合図と共に、先ずは相手の出方を見る。戦い方が分からないから、先ずは回避行動を取れる事を目標に……って、ん…? 「はあっ!……な!?」 『(……あれ?)』 木刀を振りかざしてきた相手からの攻撃を、サクはサラリと避けた。思いの外……相手の動きが、遅い。木刀を振り回してくる相手の攻撃をひょい、ひょいと簡単に避けれる位。 暫く避けていると、次第に相手の動きが読めてきて……相手が木刀を振り降ろした所で素早く背後に回り込み、トンと首筋を木刀で叩いてみた。すると、そこまで強く叩いたつもりはなかったのだが……相手は前のめりに転倒。 シンクと一緒にいて襲われた時は、いきなりで対応仕切れなかったけど……こうして落ち着いて対応出来れば、決して無理じゃないのかもしれない。 しかも、身体が軽い……アレかな。トリップして身体能力アップていう美味しい特典。オールドラントって地球より小さそうだし……理屈は分からないけど、重力の違いとか? 「ほお……思ったより出来るじゃないか。なら次は……三人一度に相手にしてみろ。敵に囲まれた時を想定しての訓練だ」 ザッ、と直ぐ様別の士官候補生達に囲まれる。訓練槍を構えた兵が二人、そして木刀一人。カンタビレの合図が降るのと同時に、複数いる相手の内一人に狙いを定め、今度は此方から走り出した。 一気に相手の間合いに入り、素早く横に木刀を払い、相手の手から槍を弾く。続いてすぐ後ろ迄来ていたもう一人の訓練兵の気配に、咄嗟にその場へしゃがみこんで足払いをかける。二人目が体勢を崩した所で下から木刀で顎を突き上げ、一人目を足で脇から蹴り付ける。木刀を持っていた三人目は、倒れてきた二人に巻き込まれ、そのまま押し潰された。 ……今度はさっきと違って、身体が自然に動いた。どうした私。何で闘えてるの? いくら相手が手を抜いている(多分)とはいえ、ついこの間まで一般人の素人だった私がここまで動けるなんて……有り得ない。 なんていうか、身体が闘い方を少しずつ思い出してる感じ。感覚的に言うと。 「少し、お前の実力を見くびっていたようだ」 『!』 カンタビレの声にハッと我に返れば、少し驚いた様子が伺える。 「次は10人を相手にしてみろ」 …見くびって貰ってたままの方が良かったかもしれない。 ズラリ、と10人の候補生達に円状に囲まれる。カンタビレ教官は彼達にこの前指導した連携した動きを意識してやれと指示してるし。うわぁ……難易度が一気に上がっちゃったよ。LV.3からLV.10くらいまで! けど、何でかな……不思議と 「かかれっ!」 負ける気がしないんだよね。 *前 | 戻 | 次#
|