生まれた意味(14/16)

レムの塔
※レムの塔に到着直後の夢主Side.

レムの塔に到着するなり、既にルークは音素の収束に取り掛かっていた。間に合わなかった事に内心舌打ちしつつ、サクもすぐさま行動に出た。懐からとある小型の音機関を取り出し、シンクに手渡す。一応シンクの同行は想定内で、彼が第七音素の収束に巻き込まれて乖離しない為の対策も、考えてたからね。シンクが私を信じてると言ってくれた以上、此方も期待に応えなきゃ、第二導師の名が廃るというものだ。



「これは?」

『周囲の第七音素の干渉を打ち消す譜を組んだ音機関だよ。試作品だけど、ちゃんと効果はあるから』



音素の干渉を遮断する譜が組み込まれており、起動させれば周囲に防護フィールドを展開させる携帯用小型音機関だ。周囲の音素の干渉(譜術攻撃を含む)を完全に遮断出来る反面、一度使用すると、使用時の反動に耐え切れずに壊れてしまう代物だが、発動する譜の効果は申し分ない出来だ。秘奥義クラスの譜術攻撃も、惑星譜術すらも通さない位だからね。ディストとの共同開発で手掛けた物で、何気にチート級の性能を誇る逸品です。本当は、今回の作戦前にルークに渡す予定だったのだが…急遽事情が変わったので。



「もしかして、前に死神から貰ってた奴?」

『そうだよ。ベルケンドで受け取ってたやつね』



シンクも見覚えがあったようで、肯定すると微妙に渋い顔をしながらも納得していた。ああ見えて、腕だけは確かな音機関博士だからね。

起動させた音機関がきちんと作動している事を確認してから、サクは音叉を握り絞め、次いで第二音素の収束に取り掛かる。



『絢爛たる光よ、惨禍を阻む壁となれ。フォースフィールド!』



譜歌の調べを詠唱に置き換え、同効果の譜術として発動させる。譜歌を歌う時間すら今は惜しいからね。むしろ、一刻を争う状況だし。

この譜術の目的は、外部からの音素の干渉を防ぐ為だ。大量の第七音素を収束する際、そして次に自分が【実行する事】に対して、他の皆に影響は及ばない為の対策。フォースフィールドで第七音素の干渉を防ぐ事が出来るのは、アッシュ協力の下、既に確認済みだ。万が一、シンクが持つ音機関の耐久性に限界がきてしまった時の保険にもなる。

音叉を基盤に展開させたこの譜陣は、座標をズラさなければ効果は永続的に維持される仕組みだ。シンクに音叉を手渡し、私の手が離れても音叉を介してフォースフィールドの発動が維持されている事を確認しながら、サクは彼にニコリと笑い掛ける。



『シンクはここで待ってて。譜陣の中から出ちゃ駄目だからね』

「待っ…」



そう言ってサクは直ぐ様立ち上がると、急いでルークの許へと掛け出した。あ、ティアがガイに抑えられてる。女性恐怖症も確実に軽快してきてるね…もっとも、こんな風に彼女を止める為に…友を見殺しにする為に、治したかった訳ではないだろうに。そんな事を思いながら彼等の方をチラ見していたら、驚いた顔のジェイドさんと目が合った。ちょっとレアだなーと思いつつ、足は止めずに彼等の傍を全力で走り抜ける。



「サク様!?いったいどうやって…」

『策ならちゃんと立てて来たよ!危ないから皆はシンクの所まで下がってて。防護譜陣敷いてるから』



ジェイドの疑問には軽くスルーして、口早に捲し立てながら、サクはルークの許へと辿り着いた。ジェイド達が背後を確認すると、確かに彼女の言った通り譜陣は展開されており、その中心にはシンクもいた。ということは、シンクも彼女の策とやらに承諾したという事なのだろう。瞬時にそう判断したジェイドは、混乱する一同をサクの指示通りに譜陣へと誘導し、自身も共に譜陣まで下がった。



「…っ、どうなさるおつもりですか!?」


『譜石帯に浮かぶ譜石を地上まで引き寄せて、第七音素として作戦に利用します!!』

「「!!?」」



声を張り上げたジェイドの言葉に対し、サクから返された答えは、予想外の策だった。

確かに、星の記憶を詠んだユリアの惑星預言には、これ以上ない程に第七音素が含まれているだろう。むしろ、第七音素の塊と言ってしまってもいい。サク様が目を付けられたのはそこだろう。しかし、だからと言って、簡単に出来る事ではない。出来るのならば、惑星預言欲しさに、人類はとっくに数多の譜石を手に入れていた事だろう。誰にも手出しが出来ないからこそ、創生歴時代より、それらは譜石帯に漂っていたのだが…






「まさか、これ程の事を本当に御一人でやってのけるとは…」



先の宣言通り。導師サクは惑星譜術を用いて、プラネットストームを発生させる様な巨大な譜業も介さずに、その身一つで譜石帯から譜石を地上まで引き寄せてみせた。思えば、陸艦から放った譜術砲撃をも物ともせず、下手をするとその譜術砲撃以上の禁術を単身でお返ししてくるような人物だ。今回の様に解決策さえ見出してしまえば、この惑星全体を覆う瘴気を消し去る偉業ですら、彼女にとっては造作もない事だったのかもしれない。

瘴気が消え去り、青く澄んだ空を仲間達と共に見上げながら、ジェイドはズレてもいない眼鏡のブリッジを押さえ、思考する。彼女という存在は、敵に回せばヴァン・グランツ以上の脅威だと、ジェイドは以前より認識している。もしも、彼女が本気でオールドラントを滅亡させようと思えば……それこそ、本当に出来てしまうのだろう。あの第二導師の少女には。

ようやく防護譜陣の発動が解除されたちょうどその時。彼女の名を呼ぶルークの悲痛な叫び声が、青空の下に木霊した。
―――――――――
要所要所端折ってますが、レムの塔到着時にサクはこんなことしてたんだよーっていう話。話の流れ的に、本編に組み込めなかったので番外編SS扱いに。

前半夢主視点→後半はジェイド視点となってます。ちなみに連載本編で言ってた譜術の二重詠唱の正体は、強化版フォースフィールド&惑星譜術の同時展開でしたという。




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