バチカル闘技場(4/8)


『アッシュー、今何人?』

「あ?…双牙斬!…何の、事だっ!」

「コッチは49…サンダーブレード!……ん、今ので51」

「…チッ、48」

『クロノが51人で、シンクが48人。カウント忘れのアッシュが最下位で決まりだね』

「な…っ!!ふざけんな!そういうテメェは…」

『はい!66人目撃破ー!』

「………」

「…これは、勝負あったね。アビスシルバー」

「素直に負けを認めたら?アビスシルバー」

「何でこういう時だけ息がぴったりなんだよテメエらは…」



シンクとクロノにからかわれ、脱力しながらもヤケクソになって応戦する器用なアッシュである。

そんなこんなで、挑戦者達が次々と退場していき、ついには数も数える程になり、乱闘試合にも終わりが見えてきた頃だった。



<<さあ!並いる猛者達を倒せし強者共よ!ここからが、本番だぜ!?>>



そんなアナウンスが響いたと思えば、ここで真打ち後から登場致しました。



「蒼破牙王撃!」

『…っ!?…フォトン!』

「おっと、効かねえ納豆!」



突如、目の前に現れた黒い彗星。視界に捉えた武器は…刀!?咄嗟に避けて、譜術によるカウンターを狙ってみたところ、見事に回避されてしまった。…っていうか、ちょっと待って。さっきの空耳は…あの名台詞は……まさか…!?

バッ、と顔を上げて相手を確認するなり、サクのテンションは一気にMAXまで振り切れた。



「へぇ?…どうやら、相手に取って不足はねえ様だな!」



うっそ、TOVの主人公のユーリ・ローウェルさん!?しかもまさかの闇落ちユーリでキター!?通常の衣装じゃなくって黒衣の断罪者ver.でくるとか、何この展開!?



『うわああああ、ガイかフレイルを連れて来れば良かった!』

「…はぁ?何でさ」

『夢の競演!お約束って奴だよ勿論!』

「意味不明なんだけど」

『……って、シンク?何で怒ってんの?』

「別にっ!―――タービュランス!」

「おわっ!?おい、俺にも当てる気か!?」

「ムシャクシャしてやった。あと、ソイツが何か強そうな感じだったから手加減と見境なく攻撃を仕掛けただけだよ」

「くそっ、悠長にツッコミ入れてる場合じゃねえ事はよく分かった」

「俺を差し置いて余所見とは、随分と余裕じゃねえか」

「ちょ、サク!後ろっ!!」

『…え?って、ギャーイケメンが近い!そして何か異様に臭い!!』

「油断し過ぎ!ディバインセイバー!」

「うおっ、と!?危ねっ!」

『っ…有難うクロノ!助かった!』



クロノの忠告に振り返ったら、すぐ傍にユーリが迫ってて、反応に遅れてしまった所をクロノに助けられてしまった。シンクのタービュランスで発生したFOFを無駄なく使ってくる辺り、クロノも抜かりない。でも名前の呼び間違い(今はユリアですから一応)には気を付けてーとサクが叫ぶ傍ら、シンクは面白くなさそうに、実に盛大に舌打ちしていたらしい。※アッシュ談

そんな事はさて置き。



『さて、いい加減ぼーっとしていないで、そろそろコッチもお返ししないとね』



なんせ相手はあのアサシン主人公ユーリ・ローウェルだ……いや、違うな。主催者側が、今回召喚する"ゲスト"は”強敵達”だって話だった筈だ。主人公サイドの人達が召喚されるのは可笑しい。となると、彼は必然的に…



『偽物、って事だ!!』

ガキイイインッツ!!



懲りずに不意打ちを狙ってきた相手の刀をBCロッドで受け止める。と同時に、超振動も発動。驚きの表情を浮かべるユーリの反応には構わず、そのまま超振動を駆使してソードブレイカーよろしく、力業で強引に相手の刀を叩き折ると、相手は突如として何処からともなく大剣を取り出してきた。…やっぱり、幻術の類いが掛かっていた模様。それに大剣というその武器、そして先程から気になっていたこの鼻に着く悪臭……間違いない、コイツは奴だ。



『…ああ!あんな所にアリスちゃんがいるー!!!』

「な、何ーーー!?何処?何処!!?」

『隙あり!…強制武装解除(ハニーフラッシュ)!』

カッ



強制武装解除(ハニーフラッシュ)。これは、第二超振動を駆使し、相手の装備を無力化させるという、女性に使うとサービスになり、男に使うと恐ろしい事になる術技だ。腐女子にはどちらもご褒美ですが。

突然、明後日の方向を指差して叫ぶという、古典的な作戦を実行してみた所。件の偽闇落ちユーリは、私の読み通り、見事に引っかかってくれました。今回は直感でやってみたけど、見事に相手の幻術変装のみを無効化させることに成功したぜ!現れた人物を見て、サクは確信する。



『やっぱりそうだ!ユーリに変装した3Kのデスク!!』

「机じゃなくて俺様はデクスだっつ!!」



偽闇落ちユーリの正体は、やはりデクスだった。詳しくは、TOSRのネタキャr…げふん、敵キャラ参照。

ていうか、異世界に来てまで変装する理由が理解出来ない。ユーリもデクスもオールドラントにはいないのだから、手の内を隠す必要性がないというのに。闘技大会を盛り上げる為の演出か?それともテイルズファンへのサービスのつもりか?ユーリかと思った?残念デクスでした!っていうぬか喜びをさせる為の……ああ、それなら納得だわ。



「おい!どういう事だ?雑魚共を蹴散らして終わりじゃねぇのかよ」

「そりゃあ、チャンピオン相手に雑魚(挑戦者)戦だけで終わらせちゃあ面白くないだろうし、これからの相手が本命って所でしょ」

『流石クロノ。分かってるね』



チャンピオンが仲間を引き連れてやって来たんだ。チャンピオンが連れている仲間に弱い者がいる筈も無く、またチャンピオン単独でも倒せないのに普通に考えて、勝てる筈がない。相応の相手を用意しないと失礼ってもんだ。軽いウォーミングアップも済んだし、ここからが本番!



『皆!ここからは幻影戦に切り替わるから、もう手加減抜きで、思う存分本気を出して行ってもいいよ!』

「チッ、んな事ぁ相手を見れば分かる!」



力量を察し、アッシュも舌打ちしている。…にしては、今の返答は、何だか楽し気でいい顔をしちゃってそうな声だったけどね。アッシュも好きだねー。

今大会の試合形式に了承し、主催者側と事前の打ち合わせをしていた際。せっかくだから最後にエキシビションマッチも組んで欲しいと主催者側からお願いまでされてしまい、サクもまたこれを快く承諾。むしろ、ここからが今大会のメインイベントだったりする。

ぶっちゃけてしまうと、この予選は実力差的にもデキレースだったという。大番狂わせがあれば、それはそれで良し!という感じで。チートチャンピオンが出るとなれば、仕方ないでしょ。決勝戦ことエキシビジョンマッチを、観客も期待していた。

バチカル闘技場のエキシビジョンマッチと言えばコレ、異世界の強者投影召喚マシーンだ。異世界…つまりテイルズシリーズの歴代キャラ達と戦えるという、面白い代物ですね。ちなみに、公式に出てくる四人組は既に一度倒しているので、今回は別の人物にするとの事。今回は誰が出て来るのかなーと、ちょっと楽しみにしていたのだ。

……で、その結果がコレだよ!!



「まいたけ政権!」

「ひゃっはああああ蜂蜜だああああ」

「マグニス様だ!豚が!」

「ダオスレーザー!」

「L!O!V!E! アリスちゃぁぁぁ〜〜〜ん!!!」



TOSとTOVのネタキャラ率の高さよ…そう言えば、アビスには敵にネタキャラはいないなぁ…って、ああ、ディストがいたか。ダオスがクロノのインディグネイションで沈められるのを傍観する傍ら、ストーカーザギを潰しておく。ザギはパターンに入られると詰むから気を付けないとね。ゲームの話。て言うか何気にザギとデクスって中の人被ってるじゃねえか。でも3Kの方のが若干五月蠅い。意外にも。

まあ、ぶっちゃけそいつら全員中ボスクラスだし。此方の戦力的な話。実力差的にテキトーで倒せそうだしむしろ瞬殺でも良いかな?…という具合に、今回のエキシビジョンマッチはネタキャラ祭り過ぎて正直拍子抜けだなー、と。思ってたら…



「ほう?今の世に、新たな導師が現れていたとはな…」

『(!新手か……って、ん?)…えっと、どちら様でしょうか?』

「死の予感、甘美であろうが」

『(あ、駄目だ。これは話が通じないタイプだ)』



一瞬、導師がどうのって言われて内心焦ったけど、どうやら私の正体がバレている訳では無い模様。て言うか、何か、見覚えの無いライオン丸っぽい感じの人が来たけど…この人(?)誰?ガジュマ?あ、災禍の顕主…って言われているんですかそうなんですかー…って、いやいや何ですかソレ!?や、やばい。私が未把握な敵キャラだコイツ。取り敢えずここはクレアアアアアって叫ぶべきかな?



「いや、取り敢えずアレはガジュマじゃないと思うけど。禍々しさが半端ないしむしろラスボスっぽい貫禄だし」

『クロノの発言がメタいn…』

「兄さん!」

「ああ!行くぞルドガー!」

「「継牙・双針乱舞」」

『〜〜〜っつつ!!?』



クロノに気を取られてる隙に、見事な連携プレイで挟み撃ちにされ、そのまま怒涛の鬼コンボを叩き込まれました。い、今の攻撃はフォースフィールドの展開が間に合わなければ即死だった。その譜術防壁も、何とか彼等からの攻撃を防ぎ切った所で破壊されてしまった為、本当にギリギリだったという。……て言うかちょい待て、クルスニク兄弟とか戦いにくいじゃねーかしかも敵キャラじゃなくて主人公クラスじゃないかおいっ!話が打ち合わせと違う!おまけに仮面ライダークルスニク化までしつくるって、ルドガーの最終形態じゃねーか!ああああさらに何かたった今ビクトルさんまで追加投影されてきやがったしいい。主催者共は私達を殺す気かよ!?



「サク!!」

『こっちは大丈夫!あと、今はユリアだからね!シンクの方こs…』

「ぶるああぁああぁああ」

「「「『!!?』」」」



焦った様子のシンクに取り敢えず無事である事を伝え、彼の方の安否確認もしようとしたタイミングで、それを遮るかのように突如として雄叫びが場内に響き渡る。その決定的瞬間を目撃してしまったサクは、先程以上に表情を引き攣らせた。

え……今の、明らかに何も無い場所の空間が裂けて現れたよね?他の投影召喚とは現れ方が完全に違ったんですけど。何か、モノホンが来ちゃったっぽいよね?むしろ来ちゃったよ!?!バルバトスぅううぅ!!!?

どうか早急にお帰り下さい、マスオさんの中の人もここにはいないから!最近マルクトに行っちゃったから!



「…ねえ、今出て来たアイツ、突然空間が裂けて出来た穴から不自然に現れなかった…?」

「ああ、シンクにもそう見えたって事は、やっぱり僕の見間違いじゃなかったみたいだね。…で、どうするのユリア?」

『うわぁあああ不味い!本物は不味い!若本は本気で不味い!』

「?何をそんなに焦っているんだ?」

『アッシュの方こそ!これは落ち着いてる場合じゃなくなったよ!むしろこれは緊急事態だよさっさとアイツを片付けなきゃさあ早くっ!一刻も早くっ!!』

「ユリアのこの余裕の無さからして……どうやら相当不味い相手みたいだね」

「不本意ながら、僕もクロノの意見に同感。…って言うか、アッシュはさっきの見てなかった訳?」

「チッ、取り敢えず態勢を立て直す為にも回復させろ!」

『チョッ、待てアイテム使うのは不味いってああっ、言ってる傍から…』

「貴様!アイテムなんぞ使ってんじゃねえええええ」

「ぐはあああああ!!?」

『アッシュゥウウウ!!』

「アッシュが死んだ!」

「このひとでなしっ!」

「勝手に殺してんじゃぬぇえええ!!」



きっとアッシュの幸運はEなんだと思う。




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