バチカル闘技場(5/8)

あの後も暫く、様々な人達が投影されまくり、試合はカオスな泥沼試合と化してしまい。こうなったら、闘技場攻略最終奥義!タイダルウェーブ!!(TOV版)という禁じ手をサクが使い、最期は各々の秘奥義ラッシュを相手に叩き込んだド派手なグランドフィナーレを飾って、チャンピオンチームの圧勝という幕引きを演出して試合を締めました。闘技場が壊れない様、建物の耐久性とのギリギリの駆け引きでもあった事は、サクしか知らない。クラス(他)の皆には、内緒だよっ!

ちなみに、某若本氏は(おそらく)元の世界に帰還して行かれました。どうやら、彼方の世界の方からレンズの力で強制帰還された模様。送り先間違えてんじゃねーよアッチの自称神さんよ。

とはいえ、私もかなり久々に本気と全力を出して闘えたりした訳で。同時に、観戦客側も最高潮に盛り上がっていたらしく。結果的には、あの方の登場もなかなか悪く無かったのではないかと、無事に生還出来た今は思う。試合中はそんな余裕は微塵も無かったがな。

そんなこんなで、控え室に引っ込み、全員がゼェハァと未だに息を切らせている中。

サクだけは、忘れていなかった。



『はあ…はあ……さあ、シンク!答えて貰うよ!君の好きな人を!!噂の守護役の子が誰なのかを!!!』

「…って、はぁ!?」



私の突然の命令に対し、驚いたシンクが動揺を露わにしながら此方に振り返ってきた。シンクの上擦った声とか、何気に初めて聞いた気がする。レア中のレアだね。



「き、急に何!?」

「…ああ、分かった。敗者が勝者の命令を聞くっていう、例のアレか」



シンクが状況を呑み込めない一方で、このやり取りを見ていたメンバーの中で、クロノが一早く理解したらしい。ニヤニヤと魔王様が愉しそうな笑みを浮かべていらっしゃる。



「つーか、シンクにそれを聞きたかっただけだろテメエっ」

『勿のロン』



それだけの為に全力ガチだったのかコイツ…!?馬鹿だよねーとは、アッシュとクロノの声。



『よし、今日はアッシュが食事当番だな』

「な…!?ふざけんな!!」

「指名制に納得したのも鮮血だろ?」

「アリエッタ、カレーが食べたい!」

「マズいの作ってアリエッタや僕等に食べさせたら吊るすからね?」



クロノとアリエッタの加勢もあり、はい論破!とアッシュに命令を押し付けた所で、改めてシンクからの返答を待つ。何で俺だけなんだ…とアッシュが何やらボヤキながら、明らかに嘲笑しているクロノを恨めし気に睨んでる様だけど気にしない。

シンクから教えてくれるのを待つって言ったけど、やっぱり私は待つだけの女じゃいられなかった。見てみたガールならぬ知りたガールか……うん、自分で言っといてこの称号名はヒドイ。

くだらない事この上ない脳内会議を繰り広げながらも、そんな事は表情には出さずに、シンクに期待の眼差しを向けるサク。シンクの方はと言うと、動揺した後、暫く考える素振りを見せ……たかと思いきや、フィッとそっぽを向いて顔を逸らされてしまった。…やっぱり、どうしても教えて貰えないのかな…と、サクが諦めかけた時だった。



「……噂に関しては根も葉も無いクロノの戯言。…他にいないから。好きな人なんて」

『(他に…?)…うん?って、え?本当に守護役の誰かじゃないの!?』

「そう言うサクの方こそ、フレイルが好きなんじゃないの?」

『いやだから、フレイルは私の友人だよ。そもそもあんなイケメン、私には勿体無いし、やっぱりエステル位のレべルのかわいい子じゃないと釣り合わないよ。個人的にはユリエスが美味しいけどさ』

「エステルって誰だよ」



……。嘘をついてる様子は、無い気がする。確かに動揺はしてるみたいだけど、話を誤魔化す為に多弁になってる感じじゃないし。サクの場合。

いつもの調子と変わらないサクの反応を見てそう判断し、シンクはひとまずホッとする。…いやいや、ホッとするって何?



『えっと、もう一度確認するけど……シンクに好きな人は、いないんだよね?その、恋愛感情で…』

「…そもそも、その恋愛感情っていうのが僕には理解し兼ねるんだけど」

『………ハッ!?』



ああそうか!うん、そうですよね!まだ生まれて二年だもんね!いくら精神年齢が成長してるとはいえ、まだ親愛とか友愛のレベルですよね!

妙に納得してしまった所で、再び我に返ると、ジト目で此方を睨んでいるシンクと目が合った。…しまった。思ってる事が全部顔に出てたかも。



「はあ…。そうやって子供扱いしてくるだろうって思ったから、適当に言ったんだけど」

『あう…ご、ごめん…』



やっぱり、顔に全部出てしまっていた様だ。ぷいっとそっぽを向き、シンクが完全に拗ねてしまった。可愛い…って、ダメダメ。そんな事言ったら、余計に機嫌を損ねられちゃう。ああ、でも…安心してしまったせいか、つい頬が緩んでしまう。残念がらなきゃいけない所なのに…ダメだなあ、私。



「…要するに、コイツラのくだらねえ私情だけの為に俺達は巻き込まれたのか?」

「当初の目的だった世界の命運を握る鍵の捜索の件を完全に忘れてる位だしね」

「というか、頭沸いてんじゃねーか?」

「喧嘩を買ってあっさり思惑に乗せられた奴の台詞とは思えない物言いだね」

「噂をダシに、あの二人を焚き付けたのはお前だよな?」

「さて。何の事だか」



付き合ってらんねーとはアッシュの声。くだらねえ痴話喧嘩じゃねえか!



「それで、鍵の方は本物だったのか?」

「残念ながら、外れだった様だね。剣と反応しないし」



試合後に受け取った今回の戦利品を片手で宙に放り投げながら、クロノは嘲笑を浮かべている。確かに珍しい宝珠ではある様だが、これはローレライは宝珠とはやはり別物だったようだ。装備すれば、何かしらステータスが上がりそうな、響律苻の様な一応貴重な代物らしい。

因みに、この他にももう一つ、オマケとして付けられた宝珠も貰っていたりする。急な頼みを引き受けて貰った事と、今回のイベントが成功したお礼らしい。主催者側曰く、宝珠は宝珠でも、此方は幻の果実の宝珠で、食べると美味しいとの事で。今日のデザートはこれで決まったな!



「チッ、やはり無駄足だったか…」

「まあ、闘技場には無いって事を確認出来たと考えれば?」

「敢えて、偽物を掴まされた可能性は?」

「それは無いから大丈夫!一応僕等もさっき確認して来たから」

「あ、フローリアン。お帰りなさい、です」

「うん。ただいまー!」

「……って、どっから現れてんだよお前は!!?」

「え?天井裏」



お疲れフローリアン。クロノ達もお疲れー!と、何事もなく至って普通に互いの労を労い合うクロノ達とフローリアンの姿を見ながら、アッシュは表情を引き攣らせる。フローリアンの奴…今、天井裏から出て来たよな?何でアリエッタやクロノは驚かねぇんだよ。



「つーか確認って、何処に何をどう確認して来たんだよ」

「闘技場内にローレライの宝珠を隠して無いか、こっそり一通り見て回って来ただけだよ?誰かに見つかる様なヘマもしてないから大丈夫!」

「フローリアン、偉いです」

「うん。やっぱりフローリアンに依頼して正解だったね。脳筋達はそこまで気を回してなかったし」

「漆黒の翼はいつでも何処でも、皆様のご依頼をお受けします!…なーんてね!」

「(…………頭が痛い…)」

「アッシュ、大丈夫…ですか?…カレー作れる?」

心配するのそこかよ。つーか、アリエッタは今回何もしてねぇd…「は?何言ってんのこの鶏。分かってないね。アリエッタの応援があったからこそ、優勝出来たんだよ?アンタの方こそ頭沸いてるんじゃない?罰としてデザートに果物ともう一個パンナコッタも追加ね」

「クソッ、ふざけんな!」



最後まで踏んだり蹴ったりなアッシュであった。

ちなみに、果実の宝珠の正体は、メラメラの実でした。アッシュに調理させて皆で食べてみた所、普通に美味しかったです。皆で分けて食べてしまったせいか、炎を操る能力は宿らなかったけど、その代わり全ステータスが向上した。…気がしました。体感的に。By.サク



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