導師イオン(3/5)


「で、アンタは一体何者なの?死神もどき」

『死神じゃないってば。私はただのしがない一般人です』

「嘘は止めてくれる?」

『嘘じゃないのに……』



イオンによる尋問(?)開始早々、早くもちょっと心が折れそうになっています。望月サクです。



「人の夢の中に出てきたと思えば、現実にも出てくるし……何処が一般人なの?」

『うぅ……夢に出てきたのはソッチの方でしょ…』



本当に何者なんだろう?とイオンはサクを見ながら思う。

過激な大詠士派による導師イオンの暗殺を企む者かとも考えたけど……それにしては敵意を感じないし、武器も持って無さそうだし、隙だらけだし、何より馬鹿そうだし……。服装こそ変なものの、彼女自身が言ったように、本当に一般人である可能性が高い。



「(となると……残る手掛かりは…)」

『…?』



ふと頭にイオンの手が翳され、サクは首を傾げる。何してんだろ……って、ああ。預言を詠もうと……って、ちょっと待って!預言って…



『え、あ、ちょっと待っ…!』

「嘘……預言が、詠めない…?」

『―――…っ!!』



瞳を驚きに見開いたイオンの言葉に、サクは呆然となる。うわわわわ、やっぱり私には預言が無いんだ!!そりゃこの世界の住人じゃないから当然なんだけど……不味いって、イオンが固まっちゃってるし!!



「ねぇ……アンタには、預言が無いの?」

『え、あ……はい。多分?』

「………信じられない…」



思わず肯定しちゃったのは良いけど、イオンが本当に驚いてるんですけど。え?やっぱり不味かったかな…?

バクバクとうるさくなってきた心臓に思わず胸元を片手で抑え……その時、ふと何か異物感を感じた。え?何だろ……と思って制服を首元から少し寛げてみるなり、私は再び固まった。

何か胸元に見慣れない宝石(?)とその装飾品(??)が埋め込まれてる!!?



『な、な…!?』

「…響律符、みたいだね」

『!?何でそんな物が…』

「ちょっと見せて」



言うが早いか、イオンは鎖骨の中心付近にある響律符にそっと指先で触れてきた。触られてる感じや痛みは感じ無い……って、何人の胸元(の響律符)を見てんのこの子!!?



『ちょっ、何して…』

「"異世界より来訪者が訪れし時、世界は変革の時を迎える。彼の者、未来を導く者の再来なり…"」

『え…?』

「……アンタには預言が無いみたいだけど、かわりにその響律符には預言が宿ってるみたいだね」



マジで?と思わず胸元の響律符へと視線を落とす。一体いつ埋め込まれたんだろ。うたた寝する前迄はこんなの付いて無かったのに。



「……アンタ、名前は?」

『サク…ですけど…』

「サク……古代イスパニア語で未来を導く者……つまり、ユリアの再来って事か……成る程ね」



ユリアの再来って……あのユリアさんで間違いないよね?多分。ティアやヴァンの先祖ですよね!?

何かイオンは納得してるみたいだけど、私はあまり納得いかないんですけど。



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