導師イオン(4/5)


「アンタ、異世界人なんだ」

『…………』



面白い玩具を見付けた子供の様な笑みを浮かべているイオンを前に、これは誤魔化せないな、って直ぐに思った。下手に嘘をついても、簡単に見抜かれそうだ。

だからといって、真実を全て話したりはしないけど。



「今更隠しても無駄だよ。それ(響律符)以外にも、アンタの事は秘預言に詠まれてるからね」

『え、そんな預言あるの?』

「…"異世界よりの来訪者、ローレライ教団の第二導師となる。彼の者、未来を導く者の再来なり"、ってね。

その響律符は、第七音素の結晶みたいだね。譜も刻まれてるし…創世歴時代の遺物かな」



何でそんな物を持ってるんだ私は。ていうか、こんなのどこぞのトリップ物の話じゃ……って、そうか!これトリップか!!

今更ながら、納得した。夢オチじゃないとしたら、もう答えはコレ位しか残ってないし。



「安心したら?アンタの身柄はローレライ教団に保護される事になる。同時に、教団の第二導師にされるだろうけど」

『………預言通りに?』

「ああ。…それとも、抗ってみる?アンタが僕に言った様に」



クスクスと、何処までも楽しそうに、人を小馬鹿にする様な笑みを浮かべるイオン。実際に、彼が言ってる事は私に対する嫌味だし。被験者のこういう所が、シンクと似てるって揶揄されてたのかな……と何となく思ったり。

……皮肉屋イオンの言葉はさておき。第二導師、ねぇ……結構面倒くさそうな役割が当てられたものだ。けど、地位的にはルーク達の様な王族にも負けず劣らず……色々と他国に手回しをする分には、建前上中立なダアトにいるのも悪くはないか。

……教団の上層部は昼ドラ並にドロドロしてそうだけど。



『……良いよ。なってやろうじゃんか。第二導師って奴に』



ニヤリ、と笑みを浮かべたら、何故かイオンに意外そうな顔をされた。何故そこでキョトンとする!



「……何だ。結局はアンタも預言に従うんだ」



つまらなさそうな…一気に"私"に興味を無くした様子のイオンに、思わず苦笑する。



『従うんじゃないよ。私は数ある選択肢の中から"選んだ"の』

「…やっぱり、アンタの言ってる事は所詮詭弁だよ。それはアンタが選んだんじゃない。預言に"選ばされた"んだ」

『確かに、こんなのは考え方が違うだけなのかもしれない……けど私は、それでもそんな風には思わない。イオンみたいに、全部預言のせいにして、未来を諦めたりはしない』

「アンタに…アンタなんかに!僕の何が分かるっ!?」

『イオンはあの時、私の手を取った。それは貴方が預言に定められた未来とは違う未来を……その可能性を、見い出したからじゃないの!!?』

「―――…っ!」

ドンドンッ

「イオン様、どうかなさいましたか!?」

「『!』」



イオンが大きく息を飲んだ瞬間、部屋の扉が大きくノックされた。その音に二人共同時にハッと我に返り、サクはサァッと表情を青ざめさせた。

しまった……騒いだせいで見張りの者に怪しまれたんだ。



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