導師守護役(8/10)

食事の後片付けまで終わってから、サクは僕を連れて図書室へ向かった。

僕がサクの部屋から出る事は少ない。こうしてサクに図書室へ連れ出されたり、食堂へ食事しに行く時位だ。

その度に毎回ヴァンから貰った仮面を着けなきゃいけないのが、ちょっと嫌だ。今も着けてるけど、息苦しい気がするし。サイズはぴったりだけど。



「導師様こんにちは」

『こんにちは』



一階に降りると、一般の参拝客や教団関係者がいて少し緊張する。サク以外の人に対して、あまり良い記憶がない。



『シンク、大丈夫?』

「…うん」



気遣わし気な視線を向けられ、内心ハッとして頷いた。

サクは僕の反応に対して何かと敏感だ。それだけ僕の事を見てくれてるんだと思う。



「大丈夫だよ」



サクが隣にいるから、と迄は言葉に出さずに、胸の内にしまっておく。

辛かったら言ってね、とサクは僕に言う。…結構心配性だと思う。

途中、タトリンさん?(ってサクは呼んでた)に声を掛けられて、僕も挨拶した。

借金増やしてないよね…とか小さく呟いてたけど、タトリンさんに首を傾げられて何でもないです、って苦笑してた。聞けば良いのに。



「素敵な仮面ですね」



……別に素敵じゃない。

サクやヴァン以外の前では顔を隠さないといけない理由があるから、着けているだけ。

理由は、僕が導師イオンのレプリカだから。



「導師様、預言を頂けませんか?」

『良いですよ』



図書室で本を借りた後も、サクは行きと同様に参拝客に挨拶を交わし、預言を詠んで欲しいという参拝客の要望にも、サクは嫌な顔一つせずに応えている。

預言、それ即ちこの惑星の誕生から生滅までが記された記憶。

預言は、無限に存在する未来の選択肢の一つだと、サクは僕に教えてくれた。けど、実際は預言はこの世界の人達の生活に浸透仕切ってて、人々は何でも預言に頼り過ぎてる傾向が強いとも言ってた。

この世界に生きる者には全て等しく存在する預言。けど、僕やサクには、預言が無い。此れは誰かに知られてはいけない、重要な秘密だ。

別に預言が欲しいとも思わないし、今の所必要性も感じていない。多分、サクがそういう考え方だからそれが影響してるんだと思う。

僕に預言が無いのは、僕がレプリカだから。

けど、サク自身に預言が無いのは……何でなんだろう?

サクが参拝客の預言を読んでいる時、ふと誰かに見られてる感じがした。周りに視線を巡らせると、近くに頭からフードを目深に被った人がサクを見てる。

この人も参拝客?と思ったけど、何となく嫌な感じがして……サクに知らせようと僕は彼女の服を引っ張った。



「………サク、」

『シンク?どうかし…』

「導師サク!」

「『!』」



変な人が見てる……と伝えようとした自身の言葉は、男の怒声によって遮られた。



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