導師守護役(7/10) 『……味はどうかな?』 「…………美味しい」 炒飯が出来上がって、サクと一緒に昼食を食べる。一口食べて、ちょっと考えてから僕は答えた。 今日のは失敗してないから、素直に美味しいと思う。味が評価が悪くなかった事に安心したのか、サクは僕の答えを聞いて嬉しそうに笑った。 『私の手料理を食べてるのは、今の所シンクだけだぞ?』 「僕だけ?」 『そ、シンクだけ』 黙々と炒飯を食べてたら、サクにそう言われた。どうして僕だけなんだろう……と少し考えて見たけど、確かに僕が頼んだ時以外に、サクが料理を作ってる所を見た事はない。 『今日の炒飯だって、シンクの為に作ったんだから』 私一人だったら食堂で済ませてるよ、とサクは笑顔で話す。改めて、残り少なくなった炒飯を見詰めてみる。 僕の為に、作ってくれたサクの手料理。 なんだろう、この気持ち。"嬉しい"気持ちは分かるんだけど……それだけじゃない気がする。 『喜んで食べてくれる人がいるって事は、料理を作る側にとっても幸せな事なんだよ?』 「幸せ?」 『そう。美味しいって言って貰えると嬉しいし、頑張って作る甲斐もあるし』 まぁ、たまには失敗もしちゃうんだけどね〜、と苦笑するサクの言葉を聞いて、自分が抱いた感情の意味が、少し分かった様な気がする。 サクが僕の為に作ってくれた料理を食べる事は、嬉しいだけじゃなくて、"幸せ"なんだ。 そう理解したら、不思議と何だかあたたかい気持ちになった。自然と口許がゆるく綻ぶ。これが、"幸せ"って感情なのかもしれない。 『此れを食べ終わったら、図書室へ新しい本を借りに行こうか?』 サクの言葉に、僕は素直に頷いた。 *前 | 戻 | 次#
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