導師守護役(5/10) ヴァンが出してきた条件、もとい要求に対し、やはりそう来るよね……と、サクは再度思う。あのまま引き下がる筈がないとは思ってたけど、案外早く出たな。 『交換条件、って事ですか…』 「師団長……つまり六神将になれば教団での地位も確立される。シンクにとっても、悪い話では無いだろう」 六神将と導師守護役の兼任なんて、シンクの負担が大き過ぎる。殺人的スケジュールになる事は必須だろう。 しかし、彼のずば抜けた身体能力の高さをいかせるのも事実だしなぁ… 『確かに、良い条件だけど……どうするか決めるのは私やヴァンじゃなくて、シンクだからね』 その話は今はまだ早計過ぎない?しかし、そうなると繋ぎの導師守護役が必要になるぞ?ムムム…。 痛し痒しな状況に、思わず唸る。そりゃあ、シンクが専属の導師守護役になってくれたら私は嬉しいけど……私の都合で左右するのも気が引ける。 そんな折、話題の張本人となっていたシンクが、タイミング良く隣の部屋から顔を出した。どうやら今の話を聞いていたらしい。 「僕を鍛えてくれるの?ヴァン」 「ああ」 「そしたら強くなれる?」 「それはシンク次第だ。だが、お前には素質がある」 「なら……やる」 シンクの返答に、私は思わず瞳を見開いた。かなり早い決断……というより、ヴァンに勧められる前から決めてた感じかな、これは。そんなに自立したがっていたとは……それとも私が過保護過ぎたのか? 「では、早速明日から稽古をつけよう」 「分かった」 「導師サクも、異存はありませんな?」 『シンクが良いなら…』 本当はヴァンが満足気なのが気に入らないんだけどね。 シンクの頭を撫でるヴァンの手付きや視線は穏やかな物だが、シンクは不快そうにヴァンを見上げてる……どうやら子供扱いされてるのが嫌な様子。 あ、シンクが導師守護役になるなら色々手続きもしなきゃ。 『(そしてゆくゆくは参謀総長に、か。結局はヴァンの思惑通りの展開になる訳ね……否、下手すると今回の場合は手の内で踊らされた可能性が高いな)』 事のきっかけとなった今回の導師襲撃事件(サク命名)、個人的に……彼らは髭がけしかけたんじゃないかと、睨んでいたりする。実は。 もしくはモースの線も考えられるけど、教団の象徴の一つでもある"ユリア"の再来と詠まれてる私を、彼が消そうとするとは思えない。預言には未来を導く者って、プラスな意味で詠まれてるし。モースの機嫌を損ねる様な行動もまだしていないから、今の所は目を付けられてはいない……筈。 どちらが犯人にしろ、真実は隠蔽され、うやむやに終わるんだろうけど。 『(けどまぁ、シンクがやりたくてやるなら良いか)』 附に落ちない点もあるが、互いの利益が一致する以上、そう納得する事にするサクであった。 *前 | 戻 | 次#
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