導師守護役(4/10)

助けて貰ったマルセルに転移譜陣がある部屋迄付き添って貰い、再度お礼を言ってからシンクと共に自室へと戻って来た。



「今日は危なかったそうだな」



疲れてる時に限って髭が部屋に来るとは…何?嫌がらせ?それともモースの回し者としてですか?



『…耳が早い事で。けどまぁ、マルセルが駆け付けてくれたお陰で助かりました。良い部下をお持ちですね』



一瞬、ヴァンが虚を突かれた顔になる。ここまであからさまに彼のポーカーフェイスが崩れるなんて珍しい、と密かに思ったり。



「何故、マルセルが私の部下だと?」

『いや、アナタ首席総長でしょ』



やべ、今のは失言だった?と一瞬思うも、ここはボケて通そうと思考を切り替える。



「フッ、首席総長だからといって、全員が私の動かせる部下という訳ではないぞ」

『…………分かってますー』



うわっ、鼻で笑われたし。失言した私が悪いんだけどさ、それでもちょっとムカツクぞ髭。



「まぁ、確かにアイツは私が目を掛けている直属の部下ではある」

『(なら最初からそう言ってよ)…マルセルに会ったら私が感謝してた事をヴァンからも伝えて下さい』

「フッ、マルセルも喜ぶだろう。

だが来れに懲りたら、専用の導師守護役をお持ちになられる事を進言しますよ、導師サク」

『う〜……考えておきます』



仮にも導師なのに、守護役を付けたがらないのは、自分の我が儘だ。

下手に守護役を付けられたら、自由に身動きが取れなくなる恐れがあるし、アニスの様なケースもある。今後の事も考えて、此方の動きがモースやヴァンに筒抜けになるのは嫌だからなぁ…。



「それから、此れは私からの提案なんだが…」

『?何ですか?』

「導師守護役を付けるのが煩わしいのであれば、シンクを導師守護役にしてはどうだろう」

『………そう来ましたか』



いくら彼を保護しているとはいえ、このまま彼を私の傍にずっと留めておくのは確かに難しい。しかし、シンクが私専属の導師守護役になるのなら、話は別だ。

シンクが導師守護役になれば、私にも導師守護役がつく事になるし、私が彼を手元に置く口実にもなる。アリエッタの前例がある為、モースにも訝しまれにくいだろう。

シンクはシンクで最近文字も覚えたし、対人スキルを除けば、仕事も支障無くこなせる程度の知識も十分身に付いてる……と思う。

不可能ではないし、私やシンクにもメリットはかなり大きい。が、同時に一番重大な問題も発生してくる。



「導師守護役に必要な戦闘能力は、私が直々に鍛えてやろう」

『アフターサービスまで万全ですね』

「ただし、此方にも条件がある」



来たな、と内心サクは思う。確実に取り引きを持ち掛けてくるであろう事は、予測していた為、ヴァンに言葉の先を促す。



「シンクを鍛えてやる条件として……ゆくゆくは第五師団の師団長にも配属させたい」






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