導師守護役(3/10)


「導師様っ!」



息つく間もなく、声が聞こえた方に振り返ると、譜術を発動させる寸前の別の男が背後にいた。しまった、コイツら二人組だったのか―…

ニヤリとほくそ笑む相手に、ゾクリと戦慄する。狂気に走った男の目には、殺す事に躊躇いが無くて。

悲鳴を上げるどころか、呼吸すら上手く出来ない。

本能は逃げろと訴えてるのに、足がすくんで動けない。



『―――…ッツ』



この時私は、生まれて初めて、死の恐怖を感じた。

シンクもろとも譜術を落とそうとしてくる相手に対し、私は呆然と男を見上げるシンクを強く抱き寄せた。

防御か相殺技……無理だ、間に合わない!



「エナジーブラス――グアッ!」

『「!?」』



男が放とうとしていた譜術は、私に当たるギリギリの所で狙いを外して放たれた。え……今何が起きた?攻撃が来るのを覚悟していたサクは、身体を強張らせたまま、いきなり吹き飛んだ男を驚いて見詰める。



「申し訳ありません導師様、御無事ですか!?」

『っ……大丈夫です。』



どうやら近くにいた教団兵が、直ぐに駆け付けて咄嗟に男を薙ぎ払ってくれたらしい。声が先程叫んでいた人と同じっぽいから、多分同一人物。

襲って来た男達は既に、騒ぎを駆け付けて来た他の教団兵に取り抑えられていた。



「導師様、この者達は如何なされますか?」

『……処遇はお任せします』



男達が連れて行かれてから、サクはヘナヘナとその場へ座り込む。はぁ〜……っと肺の中に溜まっていた空気を全て吐き出した。

未だに、手の震えが止まらない。というか、今震え始めた感じなんだけど……改めて恐怖が身に染みてきた様子。

……あ、ごめんシンク。抱き締めたまま座り込んじゃった。

そんな折、突然座り込んだ私に、先程助けてくれた教団兵が慌てた様子で大丈夫ですか!?と尋ねて来た。



『御心配をお掛けしてすみません、私も彼も大丈夫です。あと、先程は危ない所を助けて頂き、有り難う御座いました』

「そ、そんな!どうか頭をお上げください!!私共教団兵は導師様をお守りするのが役目なのですから…!」



頭を下げたら、かなり焦られた。あ〜…導師様に頭を下げられたら普通焦るか。第二導師といえど、地位は教団の最高指導者のイオンと同じだから。

もしイオンが知ったら、導師としての自覚が足りない云々言われそう。

直ぐに頭を下げてしまうのは日本人の癖かも……



『それでも、私は貴方に感謝しています』

「っ……勿体ないお言葉、有り難う御座いますっ!」



そんなに畏まらなくても良いのに……と思いつつも、仕方ないかと思わず苦笑する。教団兵の彼らからしてみれば、私やイオンは雲の上の人……なのかもしれない。



『取り敢えず、貴方も頭を上げて下さい。え〜っと……すみません、貴方の名前をお訊きしても宜しいでしょうか?』

「はっ!自分は、第二師団所属、マルセル・オスロー三等尖兵であります!」



……マルセル?何処かで聞いた事がある気が………って、ジゼルの弟じゃん!預言と髭に殺されるリグレットの弟の!!

なんていう偶然だと、驚愕を隠せないサクだったが……今はそれ所じゃない事を直ぐに思い出して我に返る。

先程の騒ぎと、導師が座り込んでる状況に、色んな人達が集まり始めてる。

シンクも固まったまま動いてないし……しかもこのままだとシンク迄人目についちゃうし、何にせよ一刻も早くこの場を離れなくては!



『えと…マルセル。一つお願いがあるんだけど…』

「は、はい!何で御座いましょうか!?」

『……腰が抜けたので、立たせて貰えませんか?』



出来れば転移譜陣の所まで連れて行って欲しいんですけど……と言えば、彼は慌てて助け起こしてくれた。初対面なのに、面目無い。



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