生命の樹(4/13)


「こんな所に二回も用事が出来るなんて思わなかった〜」

「少し前の事なのに、前来た時と随分変わったわね。私達を取り巻く状況……」



ザオ遺跡の奥へと進んで行きながらアニスが呟き、ティアの表情に僅かに影が落ちる。二人の会話に「そうですねぇ」とジェイドも同意を示した。



「あの頃はグランツ謡将も敵ではなかった。いや、その本性を見抜けていなかった」

「そうそう。今思えば、まさか総長が!って感じだよ〜」

「アニスも、まだ皆に本性をあまり見せていませんでしたねぇ」

「はぅあ!そんな事ないもん。今も昔も可愛いアニスちゃんのままですよぅ!」

「おや、そうでしたか。可愛いアニスちゃん♪」

「なんかすっげームカツク!」



楽し気なジェイドと、久し振りに黒アニスが降臨。ティアは若干頭を押さえながら「二人は相変わらず、なのかしら……?」とため息を溢していたり。

個人的にはジェイドとアニスのコンビも好きだなぁ。見てて面白いし。



「大丈夫ですよ、アニス」

「?何がですか?」



イオンに名前を呼ばれ、いまだに拗ねてる様子のアニスが振り返ると、一連のやり取りを見守っていたイオンがニコニコしながらアニスを見ていた。



「アニスはいつも明るくて可愛いですから」

「…っつ!!?」



おや?アニスがこんなあからさまな反応を見せるとは……ちょっと意外だ。他の皆も私と同じ事を思った様で、アニスの反応を見て目を丸くしている。いつもの調子で当たり前じゃないですか!って感じのツッコミを入れるのかと思ったけど……ふむ。成る程、確かにコレは可愛い。

そしてイオンはというと、相変わらずニコニコしながらアニスを見ていて……アニスはイオンや皆からの視線が居たたまれないらしく、珍しく顔を真っ赤にさせてうつ向いてたり。

何て言うか、イオン様最強伝説再び?天然って恐いね本当に。クロノとはまた異なるタイプの恐ろしさだよ。



「そういえば、ユリアに逢ったのも……ここだったよな」

「!ルーク…」



アニスとイオンの様子を見ていて何を思ったのか、ふと、ルークが彼女の事を思い出した様に呟いた。彼の隣を歩いていたティアが、少しだけ気遣わしげな表情になる。

対するサクは、内心そういえばそうだったな…と、今更ながら当時の事を思い出していたり。嗚呼、だからルークはアニス(正確には導師守護役の衣装)を見て思い出したのか。前に私がここへ駆け付けた時は、導師守護役に変装してたっけ。



「俺、あの頃が一番酷かったのに……アイツも、何かと気に掛けてくれてたんだよな…」

「…そうだったわね」



あの時の事を思い出してか、切な気な表情を浮かべるルークとティア。気付けば、他の者達も微妙に複雑な表情になっていた。



「今の俺を見たら、何て言うかな」



ルークの呟きに、イオンが何か言いたげに此方を見たが……声には出さずに駄目、と口を動かす。だって痛い位のジェイドからの視線が背中に突き刺さってるんだもん。ジェスチャーすら出来やしない。

まぁ取り敢えず、ここはイオンと共に静観に徹しておく方が良さそうだ。下手にボロを出してあの時は大変だったよね!なんて口を滑らせる訳にはいかない。前回彼等とこの遺跡で出逢ったのは導師守護役ユリアなのだから。フレイルの方も、導師守護役ユリアの存在には心当たりがあるので、私に何か言い掛けて……口をつぐんだ。此方の様子を見て、何となく察してくれたらしい。

ルークじゃないけど、ここでもシンクに会ったんだよね。私達を見逃してくれたり、何だかんだで協力してくれたりして。…私が勝手にそう思ってるだけの可能性もあるけど。

……本当に、今頃どうしてるかな…シンク。今迄、こんなに離れてる事って無かったから、すごく不安だ。シンクが心配、っていうのも勿論ある。でも、私が不安な一番の理由は、そうじゃなくて――…



グラグラ…

『わ…!?』

「サク様!」



突然の揺れに、完全に注意が散漫していた私は転けそうになった。フレイルに支えられて、何とか転けずに済んだけど。



「橋が揺れてる?」

「……橋だけじゃないわ。この地下都市全体が揺れているみたい」



ルークとティアの言葉に、それって遺跡全体が崩れる前兆じゃ……と内心思ったけど、黙っておいた。



「……微弱ですが、譜術を感じますね」

「私は感じられませんが……」



ジェイドとティアの言葉に、「罠でしょうか?」とフレイルが周りを警戒する。道具袋からピョッコリ頭を出したミュウも「敵ですの?」と、少し脅えている様子。そんなミュウの頭をルークが撫でる。



「だとしても進むしかない。せめて慎重に行こうぜ」

「おや、あなたらしからぬ台詞ですねぇ」

「うるせっ」



ジェイドの言葉にルークがむくれていた。



「サク様、大丈夫ですか?」

『うん。有り難うフレイル。ちょっと、ボーッとしてて…』

「本当に大丈夫か?病み上がりなんだから、あんま無理すんなよ」

『有り難うルーク』



また無茶をされたのですか、と言いたげなフレイルの視線が痛い位隣から突き刺さる。軽く笑って誤魔化してみたけど……多分、ていうか絶対誤魔化せてない。



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