生命の樹(3/13)


「これはルーク様!ナタリア様も!お二方とも亡くなったとの噂が飛び交っておりましたから、こうして再会できて幸せでございますよ。ヒヒヒヒヒ」



いつ聞いても悪役っぽい笑い方をするんだよねぇ、この人。顔もどちらかと言うと、良い人には見えないし。

ザオ遺跡のパッセージリングを操作する前に、私達は一度アスターの許へ赴いた。緊急事態とはいえ、いきなり降下を始める前に、やはり事前に知らせておく巾だと思ったからだ。



『アスターさん、先の件ではエンゲーブの住民の受け入れを承認して下さり、有り難うございます』

「どういたしまして。とはいえ、まさか本当に大陸が消えてしまうとは、夢にも思いませんでしたが…」



困惑を隠せない様子のアスターの反応を見て、そりゃそうだろうな…と、サクは内心思う。アスターには、エンゲーブの住民の受け入れの依頼をした際に、アクゼリュスの様にエンゲーブが崩落する可能性を少しだけ説明してあった。そういった緊急事態だったからこそ、協力して貰えたんだよね。

そんな経緯もあって、アスターの表情は何処か不安気だ。



「それで、本日はどういったご用件で?」

「実は…」



話を切り出したルークの説明を纏めると、大体こんな感じになる。

地震のせいか、ザオ砂漠とイスパニア半島に亀裂が入って、この辺りが地盤沈下を起こし始めている事。このままでは、先のアクゼリュスやセントビナーと同じ様に、ケセドニアもいずれは崩落してしまう事。また、魔界の存在も話して、ルグニカ大陸の殆んどが崩落したと思われているが、実際は魔界に降下させている事。そして、今回ケセドニアの崩落を防ぐ為に、今からケセドニアも魔界に安全に降下させに行く事…等々。

今現在世界に起きている危機的な異変と、その辺の事情をアスターにかいつまんで説明した。主にガイが。



「……魔界ですか。俄かには信じがたい話です」



全てを聞き終えた後、しばらく無言だったアスターが再び口を開いた時、彼はそう呟いた。信じられない、というより、あまり信じたくはない現実だ。

今ならキムラスカの方へ避難すれば崩落迄に間に合うかもしれないが、エンゲーブの大多数の住民もいるし、更に開戦直前だったりと色々と都合が悪い。アスターも、その事は分かっているのだろう。少しの間だけ、頭を抱えて悲嘆していた様子だったが……アスターは再び顔を上げると、改めて皆を見回した。



「しかしどのみち、私達にはあなた方を信じるより他に方法はない。住民への通達はお任せ下さい」



ケセドニアをお願いします。立ち上がったアスターは、ルーク達へ深々と頭を下げた。



「よし、ザオ遺跡へ行ってみよう!」



ルークはアスターに頷いた後、皆を見回して言った。仲間達もルークの言葉に頷く。自然とリーダーシップを発揮し始めたルークと、そんな彼に対する仲間達の態度の変化に、皆のルークへの信頼が見て取れて。安心するのと同時に、ルークの頑張りが形を成してきている事を改めて実感して、少し嬉しくなった。

少しずつ成長していくルークの背中が、以前よりも頼もしく見えた気がした。



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