世界一危険なお茶会(2/7)


「要人の護衛任務、ですか」

「あぁ。極秘任務の為、任務中は私服で来るようにとの事だ」



それは、閣下から直々に任された任務だった。アリエッタを含め、六神将を二人も派遣する任務とは……今回の要人は余程、重要な人物なのだろう。気を引き締めねばなるまい。



「詳しい内容は追って伝える。もう下がって良いぞ」

「はっ」

「まぁ、楽しんでくるといい」

「分かりま……え?」



表情を引き締めたリグレットに対し、クックッと笑いを溢す閣下に思わず首を傾げる。

結局、直前まで任務の詳しい内容は明かされず、当日に今回の要人から直接聞く事になった。それ程迄に、機密性の高い任務だという事か。

そして、迎えた当日。ダアト市街にて、指令書に記された場所で待つ事数分。アリエッタと今回の護衛対象と思われる要人が現れた。



「あのね、今回のアリエッタとリグレットの任務は、要人の護衛と……一緒にお買い物に付き合う事、です」

「…え?」



思わず耳を疑ってしまった。いや、前者の任務内容は理解出来る。しかし、後者の方はどうだ。買い物に、付き合う?護衛をするだけではなくて?



「……アリエッタ、それはどういう意味かしら?」

「女の子同士でショッピング、です!」



思わず口元を引き吊らせてしまったリグレットとは対称的に、何故かアリエッタはかなり楽しそうだ……嗚呼、閣下が楽しんで来いと言われたのはこういう事だったのか。

しかし、ここで納得するリグレットではない。



「……あなたが今回の依頼主ですか」

『あぁ、ご紹介が遅れてしまってすみません』



そう言って、頭からすっぽりローブに覆われていた要人が、フードを外した。露になった要人の顔を見た瞬間、リグレットは驚きに目を見開いた。



「ど…!?…っ、な、何故貴女が此処に!?」



咄嗟に名前を叫ばなかった所は流石リグレットという巾か。そんな事を考えながら、サクは調子に乗って惚けてみる事にした。



『何故って、私が依頼主だから?』

「失礼ながら、私やアリエッタは軍人です。導師様と買い物など出来る身分では…」

『だから名目上は護衛なんです。でも、任務の細かい指令は依頼主であり、教団最高指導者である私に決める権限があります。当然、身分に関係なく買い物を楽しめというのが私からの指令ならば、リグレットは今回の任務を引き受けた以上、従う義務も発生しますよね?』



笑顔で己の持つ権力まで振りかざしてくるとは……見掛けによらず、この第2導師はかなり横暴だ。

しかし、ここで自分が引く訳にはいかない。



「最近、テロ騒動があったばかりですし、サク様にやはり外は危険です。私は反対で…『ヴァンからも許可は降りてます』



それは確かにそうなのだが!こんな時期に、何故閣下は許可を出したのだろう。過激派にでも見付かれば……あぁ、その危険性を見越して、少数精鋭の六神将二人に護衛を任せた、と?……やっぱり復讐を諦めるのを考え直そうかしら?あの髭。

最終的に、リグレットは折れた。それこそ、彼女に導師命令だと言われてしまえば、逆らえないのだ。



『それから、出来れば敬語は外して頂けますか?目立つので…』

「分かりま…分かったわ」

『有り難う御座います!』



先日の六神将会議前の時といい、本当に彼女は何を考えているのだろう。楽しそうにアリエッタとはしゃぐ導師サクを前に、リグレットには理解出来なかった。



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