隠された真実(9/15)

フォミクリーの部屋を出た後から、微妙に……空気が重い。ちら、と後ろを振り返ったルークと偶然目が合った。どうやら最後尾にいるガイの姿を確認したかったらしい。



「ガイの奴……両親、死んじまってるのか……」

「貴方も知らなかった事なのね」



ルークの呟きに、傍にいたティアが言葉を返す。



「ああ。俺、誘拐される前の記憶を忘れちまってるんで、ガキの頃に聞いてたとしても思い出せねーから。それにアイツ、自分の昔の話あんまりしねーしな」

「大佐も言ってたけど、誰でも話したくない事を持ってる。彼が話してくれる迄、触れない方が良いと思うわ」

「……ガイの事なら、お前に言われなくても分かってるっつの!いちいちうるせぇなぁ」

『ルークはガイの親友だしね』



若干、不貞腐れているルークに苦笑しながら、サクは夫婦の傍に近付いた。あ、夫婦ってのは勿論ルークとティアの事です。



『ちなみに、これはガイ以外の人にも当てはまる事だからね。ジェイドにも……あの音機関については触れない方が良いかも』

「何かうやむやになっちまったけど、本当に何々だろうな……あの変な機械」

『……帰ったらファブレ公爵に訊いてみたら?何か知ってるかも』

「気が向いたらそうすっかな…」



そしてヴァンの計画がキムラスカにバレてしまえば良い!あ…いや、そうするとルークのレプリカ云々迄気付かれるから微妙か。残念。



「うーん……」

「アニス。どうしました?とりあえずルークと結婚する為にはティアが邪魔だというので、暗殺計画でも立てているんですか?」

「そんな物騒なこと考えてませんよぅ! ガイのことです」



いまいち元気が無いアニスの唸り声と、微妙に楽しんでる様子のジェイドの声が聞こえてきた。どうやらジェイドは既にいつもの調子を取り戻したらしい。

…ん?ていうか、これはもしや……伝説のぺたぺたスキットの流れでは!?



「ああ、女性恐怖症ですね」

「あれだけマジびびりされちゃうと、からかいにくくなっちゃうとゆーか」

「…マジびびりで悪かったな」

「はぅあ!」



アニスとジェイドの会話にガイが割り込んで来た。間違いない!これは伝説のスキットにあった話だ!!と確信した私は、至って自然な動作でガイ達の方へと視線を向けた。ちょうどアニスが驚いたのを見て、ガイが軽く苦笑している所だ。



「……いいさ。そんなに気を遣うなよ。イオンの言葉じゃないが、からかわれてる内になにげに 克服できるかもしれないしな」

「大げさな反応をしたのは背中からでしたね」



面白い悪戯を思い付いたように、口元に笑みを浮かべるジェイド。…ガイラルディア終了のお知らせですね。分かります。



「それだけ気をつけて、あとはいじり倒したらいいんじゃないですか?」

「了解!からかいまくります!」



アニスはピタリと足を止めると、ガイの方へと振り返り、ぎょっとした表情のガイの前に立ち、両手を上げた。そして…



「ぺたぺたぺたぺた」

「ややや……やめろぉぉおおおぉぉぉぉぉ……」



アニスがガイを触りまくり始めた。判子を押すように、それはもうぺたぺたと。

ガイの悲鳴に、ルーク達が何事かと驚いて振り返るも、状況を理解するなり、一気に視線が冷めた。何を遊んでいるんだ。彼らの視線がそう物語っている。



「「ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた」」



途中からジェイドまで参加し、二人から触られまくるガイ。可哀想に、プルプル震えているのは勿論、顔色は青冷め、額には脂汗まで滲んでいる。

……ごめん。ガイには悪いけど、楽し過ぎる。

アニスへの気遣いを仇で返されるとは。お気の毒に……とは思うが、今回ばかりは楽し過ぎるから私も二人を止めたりはしない。本当はものすごくあの中に参加したいのを我慢しているだけでも偉いと思ってくれ。

ジェイドも楽しんでるしさ……というか、彼に関してはひょっとして、あれですか?さっきガイが自分の話題を剃らす為にジェイドに話を振ろうとした事を根に持ってる故の仕返しとか?……ジェイドならあり得る。



「……も、ものには限度があるんだよっ!!それとジェイドも悪のりするなっ!」

「はっはっはっ」



気を遣うなとは言ったものの、我慢が限界を越えたガイは、死ぬ気でその場から離脱し、二人から距離を取ってイオンを盾に彼の後ろへと避難。イオンはアニスのブレーキになるから、妥当な判断である。

けど、さぁ……



『……ジェイド』

「何ですか?」

『…"かぷっ"はやらないんですか?』

「やろうと思ったのですが、その前にガイに逃げられてしまいました」

『ガイの馬鹿!!見損なったよ!!』

「今の何処に見損なう要素が!?ていうか"かぷっ"て何だよ"かぷっ"て!!」



ガイは必死なのを通り越して最早涙目だったり。いや〜、ジェイガイも面白いと思うんだけどなぁ。という邪な考えは口に出さずにサクは胸の奥に秘めておいた。



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