隠された真実(8/15) 「なんだぁ!?なんでこんな機械が家の別荘にあるんだ?」 屋敷の奥にあった一室へと最初に足を踏み入れたルークが、驚いた様な声を上げた。あとに続いたジェイド達も、眼科の景色に、同様に息を呑む。 扉の向こうに広がっていたのは、広大な地下空間。その中央に設置された巨大な装置……フォミクリーの譜業。流石にこれには、ジェイドとイオンの表情が変わった。 『……大丈夫だよ』 「!サク……」 階段を降りて行く最中、サクはイオンの手をソッと握った。誰にも気付かれないよう小声でイオンに声を掛けると、僅かに強張っていたイオンの表情が少しだけ安堵したように見えた。 階下に着くと同時に、イオンから手を離したが、傍からは離れなかった。 「これは……!」 「大佐、これが何だか分かるんですかぁ?」 「……いえ……確信が持てないと……いや、確信出来たとしても……」 ジェイドの様子から、彼が何か知っていると踏んだ、アニスの半ば断定的な問いかけである。 しかし、妙にジェイドの言葉の端切れが悪い。ジェイドはルークを一瞥した後、再び音機関に向き直った。 「な、何だよ……俺に関係あるのか?」 「……まだ結論は出せません。もう少し考えさせて下さい」 「珍しいな。アンタが狼狽えるなんて……」 ガイがジェイドの隣へと歩み寄る。と、同時にサクは視界の隅で小さな何かが動いたのを見た。…?今のって…… 「俺も気になってる事があるんだ。もしアンタが気にしてる事がルークの誘拐と関係あるなら……」 「きゃ―――っ!!」 全ての音を圧する大音量の悲鳴が上がって、ガイの言葉を塗り潰した。 「ご主人様ぁ!ネズミが!ネズミがいたですの〜!怖いですの〜!」 続いて、そんなミュウの喚く声が聞こえてきたけれど、全員の視線は既にガイへと向いて動かない。ガイの背中に張り付く小さな影。揺れるツインテールはアニスの物で。どうやら突然現れたネズミにミュウ同様驚いたアニスが、ガイの背中に飛び乗ったらしい。あ…コレは不味い。 「……う、うわぁっ!!やめろぉっ!!」 背中に張り付くアニスに気付いたガイは、突如、全く加減の無い力で背中のアニスを乱暴に引き剥がし、突き飛ばした。 アニスを振りほどいたガイは、頭を抱えて踞ってしまった。一瞬、何が起きたのか理解出来ず、尻餅をついたまま呆然と座り込むアニス。 「な、何……?」 「……あ……俺……」 我に返ったガイが、ゆっくり起き上がる。顔色は、僅かに青ざめている。ジェイドは眼鏡のブリッジに触れながら、ガイに尋ねた。 「……今の驚き方は尋常ではありませんね。どうしたんです」 「……すまない。体が勝手に反応して……悪かったな、アニス。怪我はないか?」 「……う、うん」 ガイは無理矢理な作り笑顔を浮かべ、アニスに手を差し伸べようとするも、その動きが途中で止まった。したくても、出来ない事に気付いたのだろう。 アニスも戸惑い混じりにガイに頷きはしたものの、立とうとはしない。此方もよほど驚いたらしい。 取り敢えず、今この中で一番冷静だと思われるサクが、助け起こす事が出来ないガイの代わりに、アニスの手を取った。 「何かあったんですか?ただの女性嫌いとは思えませんよ」 「悪い……。わからねぇんだ」 イオンの言葉に、ガイは困った様子で首を振った。 「ガキの頃はこうじゃなかったし。ただすっぽり抜けてる記憶があるから、もしかしたらそれが原因かも……」 「お前も記憶障害だったのか?」 ルークが訊くと、ガイは違う……と思う、と答えた。 「一瞬だけなんだ……抜けてんのは」 「どうして一瞬だと分かるの?」 「分かるさ。抜けてんのは……俺の家族が死んだ時の記憶だけだからな」 ガイはティアを振り返ると、肩を竦めた。口調はさらりとしたものだったが、それだけに、リアルに感じられた。 「俺の話はもう良いよ。それより、あんたの話を……」 「貴方が自分の過去について語りたがらないように、私にも語りたくない事はあるんですよ」 話を切り替えようとしてジェイドに振るも、此方も拒否されてしまった。瞳を隠すかのように、ジェイドは眼鏡の位置を直していた。 *前 | 戻 | 次#
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